2010年12月号掲載
経営者の運力 逆境をチャンスに変える神秘の智恵
著者紹介
概要
「禍福は糾える縄の如し」という言葉があるように、人生において「好運」と「不運」は交互に訪れる。このような運命の変化に浮かれたり焦ったりせず、好運にも不運にも冷静に対処し、さらに、不運を好運に転じることができる能力を、著者は「運力」と命名。仏教、ヒンズー教、アメリカ・インディアンの教えなどを引きながら、この運力の高め方を示す。
要約
「運力」とは何か?
経営者というのは、厳しい環境下でこそ、その真価が問われる。逆境の中で、ただ闇雲に頑張っても、必ずしも好転にはつながらない。
逆境でものをいうのは、経営学の知識やランチェスター戦略とかいった方法論ではない。もっと人間の土性骨に近いところの実力であり、それこそが「経営者としての土台」になるものだ。
それは本来、言語では記述できないものだが、あえて項目を挙げると、次のようになる。
「人間力、直感力、時代を読む力、運力」
これらは現実の経営で直接的に役立つ能力だ。にもかかわらず、従来の経営学の守備範囲外である。つまり学問としての経営学と、実務としてのマネジメントの間には大きなギャップが存在する。
ピザでいえば、経営学の知識は“トッピング”であり、ピザ本体ではない。それだけでは、危機的局面を切り抜けることはできない。
企業経営が危機的な局面を迎えた時、とりわけ、私がここで「運力」と名づける力を、どれだけ意識して身につけてきたかが勝負の分かれ目になる。
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一般に運力は、「好運を呼ぶ力」という意味で使われているが、ここでは次のように定義する。
①運力とは、自らの運命に対するマネジメント力
マネジメントというと、日本語では管理、経営などと訳されているが、いずれも言葉足らずだ。
原語には、「対処して、いい方向に持っていく」というニュアンスがある。