2011年12月号掲載
石ころをダイヤに変える 「キュレーション」の力
著者紹介
概要
美術館や博物館などで企画や展示を行う専門職のことを、“キュレーター”という。彼らは既存の作品の価値を問い直し、新しい価値を生み出すが、このような「キュレーション」(編集)の発想が、今、ビジネスの世界でも注目されつつある。本書では、新たな世界観を切り開くこの思考法について、iPhoneはじめ数々の成功例を挙げつつ、わかりやすく解説する。
要約
「キュレーション」の時代
このところ、シンプルな単語ひと言で時代のトレンドが表されるようになっている。
「無料」こそがお金を生み出す新しい戦略になると説いた「FREE(フリー)」。「共有」がビジネスの新しいフレームになると唱えた「SHARE(シェア)」。
そして今、それらに次ぐ、新しい発想として注目されているのが「CURATION(キュレーション)」という概念だ。
キュレーションは、美術館や博物館で企画や展示を担当する専門職のキュレーターに由来する。
キュレーターは、既存の作品、資料の意味や価値を問い直し、コンテンツを絞り込み、それらを結びつけて新しい意味や価値を生み出す。
そんなキュレーターの仕事と同じ発想が、あらゆるビジネスにおいて求められているのだ。
キュレーションをひと言で表現するなら、「編集」ないしは「新しい編集」とでもなるだろう。
「過剰な20世紀」から「キュレーションの21世紀」へ
2007年、米国でたばこのパッケージ大の大きさの超低価格の小型ビデオカメラ「Flip Video」が登場し、ネットユーザーの間で大ヒットした。
ボタンは、電源と映像の録画・再生・削除のための4個だけ。USBコネクタが内蔵されているのでパソコンに接続し、撮影した動画をYouTubeなどに簡単にアップロードできる。ネットユーザーの間で人気を博した理由はここにある。
ビデオカメラといえば、ソニーが1989年にハンディカムを発売して以来、各メーカーとも、多機能化や高機能化を進めてきた。だが、私たちは今、そのうちどれほど使いこなしているだろうか。
考えてみると、20世紀はあらゆる面で「より多く」「より高度に」を追求してきた時代だった。その結果、私たちはある時から「過剰な世界」に入ってしまった。使いこなせないほどの過剰な機能、比べられないほどの過剰な種類…。