2012年6月号掲載
第2版 リーダーシップ論 人と組織を動かす能力
Original Title :JOHN P. KOTTER ON LEADERSHIP
- 著者
- 出版社
- 発行日2012年3月8日
- 定価2,640円
- ページ数273ページ
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著者紹介
概要
ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授、ジョン・P・コッター氏。このリーダーシップ教育の第一人者が、『ハーバード・ビジネス・レビュー』に寄稿した全論文を収録した書である。優れたマネジャーの権力の獲得・強化法をはじめ、リーダーシップに関する、著者の長年の研究成果が概観できる。1999年に刊行された旧版に、新たに2章分を加えた改訂新訳版。
要約
企業変革の落とし穴
私はここ10年、より競争力の強い企業に生まれ変わろうとする100以上の企業を注視してきた。
その中には、大企業もあれば中小企業もある。また、米国企業もあれば他国の企業もあったが、企業変革を見事成功させた企業はわずかしかない。
これらの事例から得られた教訓。それは、企業変革は次の8段階を踏む必要があるということだ。
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- ①社員に危機意識を持たせる
- ②変革を遂行する強力なチームを作る
- ③ふさわしいビジョンを定める
- ④ビジョンを組織全体に周知する
- ⑤社員がビジョンに向けて行動するように、エンパワーメントを実施する
- ⑥懐疑的な社員を納得させ、信頼を獲得するために、満足のいく短期的な成果を出す
- ⑦活動に勢いをつけ、さらに難しい課題に取り組む下地を作る
- ⑧新しい行動様式を組織文化として根づかせる
どの段階であれ、致命的なミスを犯すと、それまでの成果は台無しとなる。
各ステップにおいて注意すべき「落とし穴」は、次の通りである。
①「変革は緊急課題である」ことが全社に徹底されない
第1ステップの「社員に危機意識を持たせる」。これは簡単にできそうに思えるが、決してそうではない。ここでつまずくケースが過半数を占める。
その失敗の原因は何か。従来の幸せな職場環境から社員を引きずり出すのはいかに骨が折れるものか、経営陣が十分認識していなかったケースもあれば、「変革は喫緊の経営課題である」という認識はすでに十分浸透していると高をくくっていたケースもある。経営陣が「収拾のつかない事態に陥るかもしれない」と尻込みするケースも多い。
変革を推し進めるには、当然強力なリーダーシップは必須である。リーダーシップに長け、大規模な変革の必要性を認識している人物を新しいトップに迎えることができれば、変革プログラムはうまく立ち上がる場合が多い。
成功例の1つに、危機を意図的に演出していたケースがあった。例えば、あるCEOは創業以来の大赤字を計画的に計上した。これによって、ウォールストリートに「変革は避けられない」という圧力をかけさせたのである。また、ある部門長の場合、惨憺たる結果は承知の上で、初の顧客満足度調査を実施し、その結果を公表した。
表面的には、このような戦術は危険極まりないものと映るだろう。しかし、危機意識が十分に浸透しなければ、変革の成功は望むべくもない。
では、危機意識がどれほど浸透していれば十分といえるのか。私の経験では、経営幹部の75%程度が「従来のままビジネスを進めていては絶対にだめだ」と本気で考えている必要がある。