2012年7月号掲載

勝つための経営 グローバル時代の日本企業生き残り戦略

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著者紹介

概要

今日、日本の製造業は危機的な状況にある。なぜ、こんなことになったのか。ものづくりの世界を熟知する2人の著者は、苦境の根本的な原因は、技術力ではなく、グローバル化に対応するための「戦略」の欠如にあるという。いいものを作るだけでは、もはや通用しない。こうした日本の製造業を取り巻く現実、問題点を明らかにした上で、日本企業復活の道筋を示す。

要約

日本企業を取り巻く現実

 2012年2月、半導体のDRAM製造で世界3位のエルピーダメモリが会社更生法の適用を申請した。

 記者会見で坂本社長は、主な敗因は「予想外の円高にある」と述べた。しかし、円高は原因の1つかもしれないが、「本当の理由」ではない。

 同社の倒産は、パナソニックやソニーといった大手電機メーカーが赤字を計上していることと無関係ではない。エルピーダにとって、これらのメーカーは大口の客だ。その大口の客が買ってくれないのだから、倒産もやむなしだったのだ。

 ではなぜ今、電機産業をはじめ、日本の製造業は苦境に陥っているのか?

何が起こっているのか

 まず、近年の日本の製造業はどんな展開をしてきたのか、「ものつくり」論の視点から見てみる。

 本書でいう「ものつくり」論とは、ものつくりを「もの」と「つくり」に分けて考えることである。「もの」は、思い、考え方、アイデアを指す。「つくり」は、この思いを形にする時のプロセスだ。製造業でいえば生産活動にあたる。

 この視点で戦後の日本の製造業の軌跡を振り返ってみると、日本のものづくりは、誰かが考え出した製品をいかに上手に作るかに重きを置いてきたことがわかる。「もの」より「つくり」を重視して、後者に磨きをかけてきたのだ。

 日本のものづくりに最も勢いがあったのは、1970年代から80年代にかけてである。元となる商品やアイデアは欧米にいくらでもあったので、「つくり」に注力すればよかった。

 1つは、従来は生産拠点にすぎなかった新興国が「オリジナルの製品を作る生産国になり、さらに消費国に変わった」こと。これは生産現場も市場もグローバルに大きく変わったことを意味する。

 もう1つの大変化は、世界で急速に進んだ「デジタルものづくり」の流れである。

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