2012年10月号掲載
アイデアは才能では生まれない
概要
アイデアを生み出すには才能が必要と思いがちだ。だが、花王で商品開発に携わってきた著者によれば、アイデアを出す上で大事なのは、才能ではなく、発想のコツやちょっとした訓練。そして、新しいものを創造するプロセスには共通点があるという。本書では、自身の経験をはじめ、各種業界の商品開発の事例を引き、誰もが実践できるアイデア創出法を紹介する。
要約
最終目標から逆算する
アイデアは才能では生まれない。
アイデアを出す上で大事なのは、才能ではなく、発想のコツやちょっとした訓練である ―― 。
* * *
私は、1996年に花王の生産技術研究所に入社した。そして、粉体プロセスを扱う部署に配属され、そこで「アタック」や「ニュービーズ」という洗剤の開発などを担当した。
その後、化粧品の開発を担当することになったが、困った問題が生じた。「商品の価値がよくわからない」のだ。洗剤の場合、簡単に言えば、汚れた布が白くなればよいので、男の私でもわかるが、「女性が綺麗になること」は理解不能だった。
こんなスタートだったにもかかわらず、数年後には、菅野美穂さんがCMキャラクターになった「ソフィーナ ファインフィット」というファンデーションをつくり出すことができた。正直なところ、商品をつくる才能があったわけではなく、考え方ややり方を工夫したことに尽きると思う。
理解できることで、理解できないものを置き換える
「女性が綺麗になること」という目標を理解できない私が最初にやったことは、「理解できることで、理解できないものを置き換えよう」である。
理解できる目標を設定しないと、商品をつくることもアイデアを出すこともできない。
まず、過去の商品アンケートを読んだ。その結果、唯一理解できたのは「友人に褒められた」「『ママ、綺麗』と娘に言われた」など、褒められたという感想だった。そして、「他人に褒められた人」は全てその商品の評価を満点にしていた。
それによって、自分の評価ではなく、他人の評価が重要なのかもしれない、と気づかされた。
研究をする上で大事なこと。それは、このように評価の軸を決めることである。