2012年11月号掲載
武士道
著者紹介
概要
1900年に米国で刊行され、世界的ベストセラーとなった新渡戸稲造著『武士道』の現代語訳。武士道の源流から、サムライの教育、切腹の制度、そして武士道の未来まで。新渡戸が海外の人に向けて説いた内容を、可能な限りわかりやすい言葉で紹介する。武士道は決してひからびた“歴史遺産”ではない、と述べられているように、その精神に学ぶべきことは多い。
要約
武士道とは、生きるための道である
武士道は、「桜の花」と同じものである。
それは日本の土壌で生まれ、今なお、わが国の特徴を象徴している、固有の花に他ならない。
武士道は現在もなお、私たちの中に生き続けている。姿や形こそ見えなくても、「武士道」という言葉が醸し出す道徳的な芳香は、私たちがいまだそれに影響を受けていることを思い出させる。
武士道は日常生活でも遵守すべき規範
私は、武士道という言葉を、英語で「Chivalry(騎士道)」と訳した。しかし、武士道という言葉の起源をたどっていくと、それは騎士道という言葉より広範囲な意味を含んでいることがわかる。
武士道が意味するところは、「武=武力を持った」「士=身分の高い者」が「道=生きるにおいて選ぶべき道」であり、高貴な存在であった日本の戦士階級が、職務においてだけでなく、日常生活においても遵守すべきものとされてきた。
それは「騎士階級の規律」と同等のものであり、「武士階級におけるノブレス・オブリージュ(高貴な者に伴う義務)」と呼べるものなのである。
どのようにして武士道は生まれてきたのか?
武士道とは、武士たちが守ることを要求され、また教え込まれた道徳規範たる掟だった。
それは成文化されたものでなく、口から口へと伝わってきた格言か、あるいは有名な剣豪や家臣たちが書いた言葉として残っているにすぎない。
武士道は1人の人間の頭脳によって生まれたものではなく、何百年もの間の武士たちのキャリア形成を通じ、成長してきたものだ。だから、明確に「ここに武士道の源流がある」といえない。
ただ1ついえることは、武士道は封建時代を通じて徐々に形成されたものであり、その起源は封建制の成立と同一時期と考えられるということだ。
日本においては、12世紀後半に源頼朝の政権が誕生した時、同時に封建制が生まれたと一般的には見なされるだろう。