2012年12月号掲載
大きく、しぶとく、考え抜く。 原田泳幸の実践経営論
著者紹介
概要
著者の原田泳幸氏は、アップルジャパン社長から日本マクドナルド社長へ転身し、大きな話題を呼んだ人物。100円マック、24時間営業など、業界初の施策を次々に打ち出し、低迷していた日本マクドナルドをV字回復させた。本書では、常にチャレンジし、数々の困難を乗り越えてきた氏が、ビジネスで成功するための実践的な考え方、自らとった行動について語る。
要約
新しい成長を生み出す
2004年に私がマクドナルドに入社した時は、7年連続既存店売上高マイナスという時代だった。
そうした中で私が行ったのは、進むべき方向を示したことだ。「マクドナルドの強さをもう一度回復させる」、ただその1点だけであった。
そして、1つ1つ新しい改革を進めていった。
成長の土台をつくる
代表的な改革の1つが、2005年5月から始めた「100円マック」である。
あの時、100円と言ったら皆驚いた。でも私は目の前の単価が下がっても、とにかく新しい顧客を増やそうと、ぐっと我慢した。「かつての値下げ戦略と同じだ」など、マスコミからも叩かれたが、おかげで新しいマクドナルドのファンが生まれ、成長戦略の土台ができ上がった。
その後、「えびフィレオ」や「クォーターパウンダー」など新メニューの投入で、客単価も戻った。同時に24時間営業の拡大、ドライブスルーの拡大・改良など矢継ぎ早に手を打った。その甲斐もあって、11年12月期まで8年間連続の既存店売上高のプラスという成功を果たした。
だが、さらに継続して売上を伸ばしていくためには、もう一度、客数を増やし、顧客基盤をつくり上げる必要がある。そして客単価を上げなければ、次の成長はない。
そこで、12年4月から始めた新戦略では、100円、250円、500円と、3つの価格帯を同時に打ち出した。100円メニューは前回よりも質が上がっている。そして、250円、500円はセットメニューで、値段が高いほどお得感が高まるようにした。250円は吉野家などの牛丼、500円はコンビニの弁当と、ランチで競合する市場を標的とした。
そして、それまではテレビCMの予算を「チキンタツタ」など、高価格帯の商品にかなり多めに配分していたが、それを転換した。今は高い値段の商品のCMはない。100円商品のCMだけだ。
やはり、常に「成長の土台をつくる商品」というのは必要である。
数値だけにこだわらない
「データだけにとらわれるな」と、口を酸っぱくして言っている。