2013年4月号掲載
社長は少しバカがいい。 乱世を生き抜くリーダーの鉄則
著者紹介
概要
約860あった商品アイテムを300以下に削減、年間約60種類も出していた新商品を1つに絞り込む、全社の反対を押し切って発売した「消臭ポット」を大ヒットさせる…。バブル崩壊後、“独裁的”ともいうべきリーダーシップを発揮し、低迷するエステーを見事復活させた鈴木喬氏が、自らの経験に根差すユニークな経営論を述べる。腹に響く、本物の言葉が満載!
要約
社長は社長をやれ
日本が衰退してるって言うけど、本当かな? 僕は必ずしもそうは思わない。
円高、デフレ、少子高齢化…。確かに、問題は多い。しかし、デフレだって、物価が安定しているという見方もできる。物事を一面的に見て、やたらと悲観するのはどうかと思う。
ただ、企業社会に元気がないのは確かだ。
その最大の原因は、社長だ。日本の社長の9割は社長の仕事をしていないような気がする ―― 。
* * *
僕がエステーの社長になった時、社会全体が火の海だった。バブル崩壊後の1998年だから、日本長期信用銀行、山一證券などの金融機関が次々に潰れていた頃のことだ。エステーも、バブル期に7500円の値をつけた株価が360円台まで下がるなど、火だるまになりかけていた。
社長に就任した僕は、真っ先に「コンパクトで筋肉質な会社を目指す」という旗印を掲げた。
社長業とは「忍耐業」だ
まず手をつけたのが、商品アイテムの削減だった。当時、エステーには約860の商品アイテムがあった。しかし、市場に流通している商品は3分の1もなかった。実際には大量の不良在庫が倉庫でホコリをかぶっていたのだ。
そこで、全社に大号令をかけた。「不良在庫は全部捨てろ」と。だが、誰も捨てようとしない。「誰がこんな売れない商品をつくったのか?」と、責任を問われるのを怖れるからだ。
僕は「誰の責任も問わない」と言い続けた。それでも動かない。やむなく、実力行使に出た。物流センターに自ら車で乗りつけ、怒声を上げた。「こんなホコリをかぶった商品が売れるか!」。
息が切れるまで、わめき散らした。こんなことを、月1回繰り返した。正直、「俺は何をバカなことやってんだ」と思うが、派手なパフォーマンスを演じないと、社長の「本気」を伝えられない。