2013年5月号掲載
ムーブメント・マーケティング 「社会現象」の使い方
Original Title :UPRISING
- 著者
- 出版社
- 発行日2013年3月15日
- 定価1,980円
- ページ数312ページ
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著者紹介
概要
米国の「ウォール街を占拠せよ」運動、あるいは経済危機を背景にした欧州諸国のデモ。これらに代表される社会的・政治的・文化的な運動 ――「ムーブメント」と、企業は決して無関係ではない。うまく利用すれば、顧客と深い関係を築き、利益に結びつけることが可能だ。その方法、「ムーブメント・マーケティング」について、広告代理店CEOの著者が解説する。
要約
ムーブメントとは何か
きっかけは、2人の有名人の死亡報道だった。1人はソウル歌手のバリー・ホワイト、もう1人はコメディ俳優のジョン・リッターである。
2人とも死因は心臓麻痺だった。メディアはいつものように生前をしのぶ映像を繰り返し流した。
いつもなら、それで終わりのはずだった。だが、この時は違った。続く数週間、2人の友人や親族がメディアや公共の場で、CVD(心筋梗塞などの心血管疾患)について話す姿が何度も見られた。
そして、CVDを話題にする人は次第に増えていき、2004年の春から夏にかけて、その規模は数十万人にまで膨れ上がった。
彼らはこうした会話の中で、CVDが、銃やがんやエイズを合わせたよりも速く人を死に至らしめる病気であり、とりわけベビーブーム世代に深刻な被害をもたらしていることを知った。
すると、CVDと闘おうというムーブメント(社会的・政治的・文化的な運動や活動)が湧き起こった。揃いのTシャツがデザインされ、緊急集会が開かれ、コンサートが催された。設置されたウェブサイトのアクセス数は100万件に及んだ。
やがてこのムーブメントは沈静化していった。だが、何も残らなかったわけではない。心血管疾患のリスクに関する市民の認識は劇的に高まった。
誰もが利用できるムーブメント・マーケティング
このムーブメントの火をつけたのは私である。
私はマーケティング代理店を経営している。その代理店を創業した頃の話だ。当時の顧客に大手製薬会社のファイザーがあった。同社は、心血管の疾病に関わる薬を数多く市販しており、心臓麻痺のリスクがあることをベビーブーム世代に気づかせる方法がないかと頭を悩ませていた。
もちろん、ごく普通の戦略を取ることもできた。心臓の病気に関するコマーシャルを流すのだ。だがそれでは、ほとんどの人が耳を貸さないだろう。そこで私は、ムーブメントを起こすことにした。
まず、この問題に関係のある人の中で、注目を集めそうな数名(ホワイトやリッターの親族など)に協力を仰ぎ、巷で心疾患が話題になるような環境を作り上げた。