2013年7月号掲載
バブルの死角 日本人が損するカラクリ
- 著者
- 出版社
- 発行日2013年5月22日
- 定価836円
- ページ数253ページ
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著者紹介
概要
日米で株価が高騰するなど、世界経済はバブルの様相を呈してきた。だが、浮かれている場合ではない。実は日本国民の富が一部の“強者”にだけ流れるカラクリが、各種制度に埋め込まれている。例えば、消費税に内蔵された「輸出還付金」、あるいは株主資本主義を加速させる「時価会計」。これら国民の富を巧妙に掠め取る「裏の仕掛け」を、本書は明らかにする。
要約
消費税というカラクリ
バブルには死角がある。
この先数年、日本経済がかりそめの景気回復で終わるか、50年先、100年先の経済基盤を整えることができるか、今はまさにその瀬戸際にある。
というのも、日本のそこかしこに、国民が働いて生み出した富を巧妙に掠めとっていく様々な「強者のルール」が埋めこまれているからだ。
そうした見えざるカラクリの中でも、最も憂慮しているのが消費税である。消費税の内実を精査してみると、少なくない額が、国民に配分されることなく別のところに漏れていることがわかる。
なぜ経団連は消費税増税を歓迎するのか
多くの人々にとって、消費税の増税は願い下げのはずである。消費者の購買意欲は減退し、日本経済全体にとっても大きなブレーキになるからだ。
ところが、財界は消費税増税を歓迎している。
なぜか? それは、消費税は輸出企業にとって「打ち出の小槌」だからだ。打ち出の小槌は、税制度上では「輸出還付金」と呼ばれる。輸出企業は、輸出販売すると還付金が戻ってくるのである。
政府や財務省の説明では、輸出還付金が認められる理由は以下のようになる。
企業がモノを輸出し販売しても、海外の消費者から日本の税制の定める消費税はもらえない。一方で、輸出企業は製品を仕上げるにあたって原料や部品を購入する際、国内の下請け企業などに消費税を支払っている。そのままでは輸出企業は消費税を払うばかりなので、国内で支払ったとされる分の税金を国が還付する、というわけである。
2012年度の国の予算書によれば、輸出還付金の総額は2兆5000億円にのぼる。現在の消費税による国の収入は約10兆円。この4分の1にもあたる金額が、輸出企業に還付されているのだ。
医療サービスと異なる輸出大企業優遇制度
消費税が輸出大企業優遇制度であることは、医療サービス部門への課税と比べるとはっきりする。