2013年9月号掲載
働き方 「なぜ働くのか」「いかに働くのか」
著者紹介
概要
人はなぜ働くのか? 稲盛和夫氏が、自らの体験を織り交ぜながら、働くということに込められた、根本的な価値を説く。人生に苦難はつきものだが、「働く」こと自体に、そうした過酷な運命を克服し、人生を希望あふれるものにする力がある、と氏は言う。働くことの目的を見失いがちな今日、労働の意義、素晴らしい可能性に、改めて気づかせてくれる書である。
要約
幸福になる「働き方」
この国は今、「道しるべのない時代」を迎えている。
確かな指針を見いだせない中にあって、少子高齢化や人口減少、地球環境問題など、過去に経験したことがない問題に直面し、人々の価値観そのものが、大きく揺らいでいるように見受けられる。
「働く」ということに関する考え方、仕事に対する心構えも、その1つなのかもしれない。
「なぜ働くのか」「何のために働くのか」。多くの人が今、その目的を見失っているようである。
私たちは「自らの心」を高めるために、働く
何のために働くのか ―― 。
その理由を「生活の糧を得るため」と考えている人が多い。もちろん、生活の糧を得ることが、働くということの大切な理由の1つであることは間違いない。ただ、それだけではないはずだ。
人間は、自らの心を高めるために働く ―― 私はそう考えている。日々、一生懸命に働くことには、私たちの心を鍛え、人間性を高めてくれる、素晴らしい作用があるのだ。
「よく生きる」ためには、「よく働くこと」が最も大切なことである。それは、心を高め、人格を磨いてくれる「修行」と言っても過言ではない。
南太平洋のある未開部族の村落では、「労働は美徳」という考え方があるそうだ。
そこでは「よく働くことが、よい心をつくる」という労働観を中心に生活が営まれており、「労働は苦役」という概念が全く存在しない。
一方、人類に近代文明をもたらした西洋の社会には、キリスト教の思想に端を発した「労働は苦役」という考え方が基本にある。聖書にあるアダムとイブのエピソードを見ても、それは明らかだ。