2013年10月号掲載
非常識な本質 ヒト・モノ・カネ・時間がなくても最高の結果を創り出せる
著者紹介
概要
世界に誇るスーパーカー、日産GT-Rの開発・製造・販売全ての責任者を務めた水野和敏氏が、最高の結果を生むための、ビジネスの「本質」のつかみ方を伝授。エリートではなくリストラされた人を使う、あえて少ないヒト・モノ・カネ・時間で仕事をする…。自らの仕事術を例に、常識の先にある本質=あなたの未来を祝福するカギを手に入れ、使う方法を示す。
要約
世界一を目指した型破りな開発
僕は、この春に日産を退職した。
最後に手掛けた「日産GT-R(R35型)」は世界初のマルチパフォーマンス・スーパーカーで、開発・製造・販売全ての責任者をやらせてもらった。
開発にあたって真っ先に考えたことは、日本の文化である「おもてなしの心」と「匠の技」というコンセプトを徹底的に織り込んで世界と勝負し、日本のナショナリティブランドが世界中の人を魅了できるということを証明することだった。
一方で、僕やチームのスタッフが常に心がけたことは、従来の常識の壁の向こうにある思考の盲点に潜む「本質」をつかみ取ることだった。
その結果、GT-Rはポルシェやフェラーリを超え、欧州の超一流メーカーが教科書として学ぶクルマになった ―― 。
エリートほど使えない
2003年12月、世界トップの性能を持つ日産GT-Rの開発がスタートすることになった。
開発を任された僕は、会社で宣言した。
「僕は、3年以内に最高のエンジン、最高のサスペンション、最高のミッションを備えた全く新しいジャンルのマルチパフォーマンス・スーパーカー日産GT-Rを開発する。ポルシェやフェラーリも追いつけない性能を持ったスーパーカーを」
カルロス・ゴーンCEOには、こう宣言していた。
「開発は期間3年、スタッフ50名でやります。ヒト・モノ・カネ・時間は従来の半分です」
この宣言通りにプロジェクトを遂行するには、理想のスタッフを集めることが急務だった。