2014年1月号掲載
ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略
Original Title :UNCOMMON SERVICE:How to Win by Putting Customers at the Core of Your Business
著者紹介
概要
並外れたサービスを提供し、顧客満足と収益を両立させる。この厄介な問題に答えた書だ。「どこに重点を置き、どこで手を抜くべきか判断する」「顧客にサービスの一翼を担わせる」等々、成功するサービスに必要な要素を説く。ハーバード・ビジネススクールのケーススタディも豊富に紹介。サービスモデルの改善を考える上で、大いに参考になる1冊といえよう。
要約
原則1:「全てが最高」には無理がある
サービスエコノミーの時代だと言われる。今日、米国ではGDP(国内総生産)の80%をサービス産業が生み出している。
数々の調査によれば、消費者の満足度を大きく左右するのはサービスの質だ。ところが現実には、良質なサービスに出会うことは少ない。なぜか?
この問いに対する本書のメッセージは単純だ。「全てが最高」という考え方には無理があるということである。
あらゆる面で高水準のサービスを提供しようとすれば、ほぼ確実に、精彩を欠いたサービスしか生み出せない。上質なサービスを実現するためには、必ず何かを犠牲にしなくてはならないからだ。
この現実を知り、対処すれば、良質なサービスを実現する道が大きく開けてくる。そのためのポイントとなるのが、次の「4つの原則」である。
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まず、前述の通り、「全てが最高」には無理がある。これが、1つ目の原則だ。
必要なのは、質の高いサービスを提供するために、あえて質の悪いサービスを提供する覚悟だ。
顧客が重んじていない側面でサービスの質を落とさない限り、顧客が最も重んじる側面でサービスの質を高めることはできない。
では、どの側面でサービスの質を高め、どの側面を切り捨てればいいのか。その判断は、自社の顧客がどういう人たちで、現実に何を求めているかを深く掘り下げた上で下す必要がある。
コマースバンクの戦略
銀行家のバーノン・ヒルは、コマースバンクを創業した時、既存の金融機関をまねるのではなく、大きな成功を収めている小売企業を手本にした。