2014年2月号掲載
自分史の書き方
著者紹介
概要
人生の“セカンドステージ”を見通す上で、欠かせないのは、自分のこれまでの歩みを見つめ直すこと。そのための最良の方法は、「自分史」を書くことである ―― 。知の巨人、立花隆氏が、立教大学でシニア世代を対象に行った、自分史の授業を書籍化。自分史を書くことの意義、何をどう書くべきかを、実際の講義と受講生の作品に即して、わかりやすく説く。
要約
自分史を書くということ
立教大学に、シニア世代向けの『立教セカンドステージ大学』というものがある。そこで、「現代史の中の自分史」という講座を担当した。
これは、「自分史を実際に書かせる」ことを主目的とする授業だった。
開講当時、一般社会のリタイア年齢は60歳。だが、平均寿命が男性79歳、女性86歳まで延びた現在、60歳はリタイア年齢として早すぎる。
むしろ、60歳は人生の中間地点ぐらいに考え、「そこから、人生のセカンドステージがスタートする再出発地点だと考えるべきだ」というのが、このコースの発想の原点だった。
このような中間再出発地点に立った時、なすべきことは「過去を総括する中締めと、今自分たちが立っている地点を再確認すること」、そして「未来の可能性を展望すること」ではないか。
そのために必要なのは、じっくり考えることである。
私は、人間誰でもシニア世代になったら、一度は自分史を書くことに挑戦すべきだと思っている。自分史を書かないと、自分という人間がよくわからないはずだからである。
こんなことを改めて勧めなくても、人間不思議に、還暦という、生まれてから60年目にやってくる人生の大きな区切りを目の前にするあたりで、誰でも「自分の人生っていったい何だったんだろう」と考えたくなるものらしい。
だが、そんな大きな問いを立てても、そう簡単に答えられない。それに答えるにはまず、人生っていったい何? という問いに答える必要がある。
その問いに対する答えは簡単だ。とりあえず、人生とは「1人の人間がこの世に生を受けた後、その人の上に時々刻々起きてきた『一連の事象の流れ』」といった程度の暫定的定義で充分だろう。
とするなら、そのような一連の事象の流れをつかむことにこそ、「自分の人生は何だったのだ」という問いへの答えがある。そして、それをつかむために何より必要なのは自分史を書くことだ。