2014年9月号掲載
リーダーやニッチャーでなくても勝ち残る 「フォロワー」のための競争戦略
著者紹介
概要
「選択と集中」は競争戦略の定石とされる。だが、果たしてそうか。選択と集中は、ハイリスクハイリターンの戦略。大企業ではない、大半のフォロワー企業(普通の企業)にとり大切なのは、リスクを減らし安定成長を図ること。そのための戦略、“リスクヘッジ競争戦略”を、「競争回避」「顧客ロイヤリティ」「持たざる強み」等の観点から、各種事例を交えて説く。
要約
リスクヘッジ競争戦略
わが国に400万社あるといわれる企業の大半が、業界リーダーに追随する企業、「フォロワー企業」(普通の企業)である。
従来、フォロワー企業に求められていたものは、他社とは差別化してやるべきことを絞り込み、「選択と集中をせよ」ということだった。
しかし「選択と集中」とは、本質的にハイリスクハイリターンの戦略だ。巨大企業であれば、この戦略は有効だろうが、中堅中小企業に必ずしも当てはまるとは限らない。今まで以上に絞り込むと、逆にリスクが増加するだけだからだ。
むしろ大切なのは、なるべくリスクを減らして安定成長を図るという戦略である。リスクヘッジを内包した戦略モデルを検討することだ。これは、いたずらに急成長を求めるのではなく、破綻せず、持続的な成長を求める点に特徴がある。
この「リスクヘッジ競争戦略」の方向性は、次の5つである。
①競争回避
孫子の兵法を引き合いに出すまでもなく、最善の戦略は「戦わずして勝つ」である。リスクヘッジという点でも、競争を回避するのが最善策だ。
その戦略には、例えば、次のようなものがある。
・提携棲み分け戦略
多くのフォロワー企業にとり、競争を回避する一番の方法は、リーダー企業と組むことである。例えば、リーダー企業と商品ラインを棲み分ける打ち手がある。典型例は、自動車業界に見られる。
半世紀前、ダイハツ工業とトヨタ(当時はトヨタ自工とトヨタ自販)は業務提携を締結した。その後1998年に、トヨタがダイハツを子会社化。
そして、ダイハツは軽自動車への特化を進めていく。その結果、軽自動車の世界では、ダイハツはスズキと二強体制を形成するに至った。
・同業基盤活用戦略
同業の基盤を有効活用して、WIN-WINの関係を築きながら、顧客に対するよりよいサービスを提供する戦略である。