2014年9月号掲載

幸福論

Original Title :PROPOS SUR LE BONHEUR

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著者紹介

概要

様々な訳で親しまれてきた、フランスの哲学者アランの『幸福論』を、画期的新訳で紹介する。文体が独特な原文を読みやすくするため、接続詞や説明を補足。また、各項目の最初には楽しいイラストとともに、その項のキーワードを掲載。ポイントが一目瞭然で理解しやすい。原著は約90年前のものだが、その内容は私たちの心に今も響き、気づかされることは多い。

要約

アランの幸福論

 気分の変化は一時的な生理現象から生まれるだけなのに、人はそれを拡大解釈しがちである。こうして気分が不幸につながってしまう。

 私が言いたいのは、さしたる原因もなく不幸になっている人たち、自分の思い込みから不幸になっている人たちのことである。

名馬ブケファロス

 赤ん坊が泣いて手がつけられないと、乳母はその子の性質や好き嫌いについていろいろとうまいことを思いつく。ついには遺伝まで持ち出して、この子は今からお父さんそっくりだなどと言う。

 こんな具合にあれこれ推理力を働かせているうちに、おむつに刺さったピンを見つける ―― 何のことはない、原因はピンだったのである。

 アレクサンドロス大王が若かった頃、名馬ブケファロスが献上されたが、どんな名手も乗りこなすことができなかった。

 だが、アレクサンドロスはピンを探し、見つけた。馬が自分の影に怯えていることに気づいたのだ。怯えて跳ねると影も跳ねるので、きりがない。

 アレクサンドロスが鼻面をとって太陽に向け、そのまま押さえていてやると馬は安心し、やがて疲れておとなしくなった。

 恐怖のような強い情念は、その本当の原因を知らないとどうすることもできない。若き大王は、そのことをすでに知っていたのだった。

アリストテレス

 やってもらうのではなく自分でやることが、喜びの本質だ。だが、アメはしゃぶってさえいればそこそこおいしいものだから、多くの人が幸福も同様に味わえると期待し、まんまと裏切られる。

 聴くだけで自分では歌わないなら、音楽の楽しみはほとんど味わえない。美しい絵を見る楽しみは所詮ひとときの楽しみであり、長続きしない。自分で絵筆を振るったり、苦労して蒐集したりするから楽しいのである。判断するだけでなく、探求し征服することを私たちは楽しむ。

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