2014年10月号掲載
ビッグチャンス 追い風の今、日本企業がやるべきこと
著者紹介
概要
バブル崩壊以降、長らく低迷続きだった日本企業。しかし、アベノミクスがもたらした景気回復により、再び世界の覇者になれる芽が出てきた。本書は、このチャンスを掴むため、日本企業がやるべきことを説いた1冊。グローバル企業の経営の最前線に身を置く著者が、長年に及ぶ日本企業の低迷の原因を分析した上で、世界で勝てる人事・組織への切り替え方を示す。
要約
日本企業が低迷を続ける理由
多くの日本企業はこの20年間、市場シェアの低下と低収益にあえいできた。
この低落傾向は、ビジネス誌『フォーチュン』が毎年発表する「フォーチュン・グローバル500」のリストを見るだけで実感できる。1995年には141社の日系企業がランクインしていたが、2013年は62社。6割近くが圏外に去ったのだ。
これらはもともと世界市場を相手に事業を展開する企業群であり、国内経済の不調や円高による為替要因だけで、こうした長期低落を十分に説明することはできない。日本企業の会社のカタチそのものに大きな病理があったと考える方が自然だ。
日本企業が復活するには、まず、それがどんな病理なのか、どうすればその病理を完全に治癒できるのかを見極める必要がある。
低迷の原因①:グローバル化に立ち後れた
バブルが崩壊して最初の10年間、日本企業は資産価値の下落で多大なダメージを受け、なかなか立ち直れなかった。
終身雇用や年功序列といった既存の仕組みは、それらがもたらした過去の大成功ゆえに、むしろ現状維持的に作用し、企業の構造改革と早期回復を妨げる要因になるケースが多かった。
加えて、日本企業にとって不幸だったのは、最初の10年で、世界経済のゲームが根本的に変わったことだ。それを端的に表すキーワードが「グローバル化」と「デジタル革命」の2つだ。
グローバル化により、最も安い国から原材料を調達し、最も人件費が安い国で生産し、世界中の市場で売ることが可能になったため、従来の「加工貿易戦略」は限界を迎えた。原材料を輸入し、製品を輸出して差額を儲けるよりも、別の最適な組み合わせが世界のあちこちで実現したのだ。
メーカーなら、開発、生産、販売、マネジメント、全ての機能についてグローバルに最適分担を行う、「フル」グローバル化の時代が訪れたのだ。
だが、多くの日本企業はこの流れに大きく立ち後れた。原因の1つに、日本にとってのホームマーケットがそこそこ大きかったことがあげられる。
1990年の日本のGDP(国内総生産)は全世界のGDPの15%。これに日本の輸出企業の主戦場、米国のGDPを足すと、約45%。これだけ大きな市場を相手にしていれば、当時は数%だった新興国市場を積極的に攻めなかったとしても無理はない。