2015年3月号掲載
マーケッターとデータサイエンティストが語る 売れるロジックの見つけ方 行動経済学より役立つLPOツールで解明する計画外の購買行動
著者紹介
概要
今日、値引きや広告宣伝をしても、商品は売れない。必要なのは、意図的に「衝動買い」を生み出すこと ―― 。マーケティングとデータ分析の専門家が、人々が衝動買いをするメカニズムを解き明かし、売れる仕組み作りに結びつける方法を指南。メディア、店頭、通販、あらゆる販売シーンで有用な、「売れる!」を実現する販売ロジックの見つけ方が披露される。
要約
「売れる!」を増やすのは計画外の買い物?
私たちは、マーケティングの定義について、「製品の開発から製造、流通からアフターマーケティングまでを含めた『放っておいても自然に売れる仕組み』について考案し、実行すること」と教えられたはずだ。
しかし今の世の中にあふれているのは、マーケティングとは真逆のセールスプロモーション(販売促進)であり、広告宣伝や値引きで辛うじて売っている商品ばかりだ。買い手にとって必要のない商品を、ただ安く売るだけでは限界がある。
煽っても売れない!
一方、通販においては、希少性や限定性が購買理由の1つとされてきた。
「1000個限定」「今だけ、今日だけ!」など数量や期間、機会を限定することで、「あの時買っておけばよかった…、と後悔しても手遅れ!」と、購買しないことのリスクを訴えかける。
こうした手法を“煽り”と呼び、従来は煽れば煽るほど売れるとされた。だが、「最近は以前のように煽りが効かない」との声を通販だけでなくEC(電子商取引)その他でも耳にする。なぜか。
実は、人の行動には、自らの欲求を実現するための「欲求充足行動」と、行動に伴うリスクから免れるための「リスク回避行動」とがある。そしてどちらの行動が優勢に働くかは、価格だけでなく、時代や社会など環境による影響を強く受ける。
例えば新興国のように貧しく、しかし経済が急成長している社会では、リスクに対する懸念より欲しいモノを手に入れるための欲求充足行動の方が優勢だ。だから、煽れば煽るほど売れる。
だが日本のように、豊かではあるが、経済が停滞した社会では、無駄な出費を増やしたくないというリスク回避行動の方が優勢になる。そのため欲望を煽るだけのアプローチでは商品は売れない。
楽天市場は“出逢い買い!”を誘う
これまでマーケティングにおいて「20:80の法則」というと、「2割の上位客が8割の売上と利益に貢献する」といった文脈で使われてきた。
しかし、私が楽天市場の新規出店者向け説明会で耳にした「20:80の法則」は全く別物で、その内容は以下のようなものだった。
「楽天市場で成功しているショップの売上に占める、自然流入客(目的買いや指名買い客)の割合は2割未満。つまり楽天市場に出店しても、ただ口を開けて待っているだけで売れるのは、出店者が期待する売上高の2割未満。残り8割の売上を達成するためには、出店者自らがメールマーケティングを実施し、目的買いや指名買いではない“出逢い買い”(意図的につくる衝動買い)を狙っていく必要がある」