2015年4月号掲載
敗者のゲーム〈原著第6版〉
Original Title :WINNING THE LOSER'S GAME
著者紹介
概要
機関投資家が鎬を削る今日、「市場に勝つ」のは難しい。著者によれば、投資に成功するとは、値上がり株を見つけることにあらず。自ら取り得るリスクの範囲内で、長期的な投資計画を立て、それを守り、長期リターンを得ることだという。その方法が説かれた、全米100万部を超えるロングセラーの最新版だ。証券市場と証券投資の本質が、わかりやすく示される。
要約
資産運用でまず押さえるべきこと
企業も市場も経済も、時とともに移ろいゆく。だが、投資の基本原則は揺るがない ―― 。
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機関投資家の運用成果を測定している会社から送られてくるデータを見ると、ほとんどの機関投資家は市場には勝っていない。つまり、成績が市場平均を下回っている。市場平均を上回るような成果は時おり見られるが、長続きはしていない。
伝統的に資産運用の世界では、市場に勝つことができるという信念が支配的だった。しかし時代は変わり、今日ではこの前提は、プロの運用機関にとってさえ当てはまらない。年間成績では約6割のマネジャーが市場平均を下回っている。
運用は「敗者のゲーム」になった
機関投資家の証券運用を「勝者のゲーム」から「敗者のゲーム」に変えたものは何なのか?
科学者のサイモン・ラモは、勝者のゲームと敗者のゲームの決定的な差を、『初心者のための驚異のテニス』という本の中で明確にしている。すなわち、テニスには2種類のゲームがあり、1つはプロおよび天才的アマチュアのゲーム、もう1つはその他大多数のゲームである、と。
プロは強力で正確なショットを放ち、敵の手の届かない所へ打ち込んで勝利をつかむ。一方、アマチュアのテニスでは、素晴らしいショットはなかなか見られない。得点のほとんどは、相手のミスによるものだ。
つまり、プロのテニスは勝つために行ったプレーで結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスは敗者がミスを重ねることによって決まる「敗者のゲーム」なのである。
資産運用と呼ばれる「マネーゲーム」も、最近数十年で、勝者のゲームから敗者のゲームへと変わってしまった。証券運用の世界で根本的な変化が起きたのだ。
なぜ「敗者のゲーム」になったのか?
市場より高い成果を上げようと懸命に努力する機関投資家が多数現れ、市場を支配するようになってきた。この変化がすべての原因である。
今やアクティブな運用機関は、初めて市場に顔を出す金融機関やアマチュアと競争しているわけではない。彼らは、他の優秀な専門家と敗者のゲームを戦っている。要するに、プロのファンド・マネジャーが極めて優秀であるからこそ、個々のマネジャーは彼らの総体である市場に勝つことができないのだ。