2018年8月号掲載
投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識
Original Title :The Most Important Thing:Uncommon Sense for the Thoughtful Investor
著者紹介
概要
世界最大級の投資運用会社オークツリー・キャピタル・マネジメントの創業者が、自身のキャリアを支えてきた投資哲学を語った。周りとは反対の「逆張り」をする、我慢強くチャンスを待つ、無知を知る…。40年以上の豊富な投資経験から得られた教訓は、リスクから身を守り、市場に勝ち続けるためのヒントを与えてくれる。
要約
投資を成功へと導く「教え」
過去20年間にわたり、私は顧客にレターを書いてきた。このレターで私は、自らの投資哲学を披露し、金融市場の機能について論じてきた。
これらのレターから、今日にも当てはまる教訓を紹介しよう。
「二次的思考」をめぐらす
私が考える、「成功する投資」の定義。それは、市場と他の投資家を上回るパフォーマンスをあげることだ。そして、そのために必要なのは、より鋭敏な思考、「二次的思考」である。
例えば「これは良い企業だから、株を買おう」というのが一次的思考。一方、「これは良い企業だ。ただ、周りは偉大な企業と見ているが、実際にはそうではない。この株は過大評価されていて割高だから売ろう」というのが二次的思考だ。
一次的思考は単純で底が浅く、誰でもできる。一方、二次的思考は奥が深く、複雑である。二次的思考をするには、次のように多くのことを頭に入れなければならない。
- ・今後、どのような範囲の出来事が起こりうるか?
- ・その中で、実際に起きると思うのはどれか?
- ・その予想が当たる確率はどれぐらいか?
- ・コンセンサス(アナリストの業績予想の平均)はどうか?
- ・自分の予想はコンセンサスとどう違うのか?
一次的思考をする者は、他者と同じように考え、だいたいは同じ結論にたどりつく。当然、これではすばらしい成果をあげることはできない。
リスクをコントロールする
私の考えでは、優れた投資家はリターンを生み出す能力と少なくとも同じぐらい、リスクをコントロールする能力を持っている。そして、獲得するリターンに相応する水準よりも低いリスクをとる者こそ、優れた投資家だと私は考える。
つまり、低いリスクをとってほどほどのリターンをあげたり、ほどほどのリスクをとって高いリターンをあげたりする者だ。高いリスクをとって高いリターンを達成しても意味はない。何年にもわたって実現できるのであれば、話は別だが…。
投資の達人として知られるウォーレン・バフェット、ピーター・リンチらは皆、高いリターンをあげているだけでなく、巨額の損失を出すことなく何十年も安定した成績を記録している。彼らはリターンの獲得だけでなく、リスクのコントロールでも、優れた手腕を発揮してきたのだ。
サイクルに注意を向ける
投資の世界では、確実なことはほとんどない。価値は消失するかもしれず、予測は外れうる。それでも、胸を張って信じられる原則が2つある。
- ①ほとんどの物事には、サイクルがある。
- ②利益や損失を生み出す大きな機会は、周りの者が原則①を忘れた時に生じることがある。
ほとんどの物事は一本調子には進まない。前進もすれば、後退もする。物事は上昇と下降、成長と衰退を繰り返す。経済、市場、企業も例外ではない。必ず浮き沈みがあるのだ。