2015年9月号掲載
良い値決め 悪い値決め きちんと儲けるためのプライシング戦略
著者紹介
概要
「良いものを、より安く」。かつては、この価格戦略が日本企業を成功に導き、長く値決めの常識とされてきた。だが、低成長時代の今、これが多くの企業を安値競争の泥沼に引きずり込んでいる。本書は、値決めを巡る現状を説くとともに、単なる“値下げ・値上げ”ではない、「新たな値決めの常識」を伝授。高価格でも顧客が満足する売り方をわかりやすく示す。
要約
ドッグ(DOG)ビジネスは「無料」に向かう
景気が良かった昔と違って、いまや価格を下げても売れない。そんな時に価格を安くしすぎると、売上が増えても、利益が減ってしまう。
デジタル世界では価格破壊が進みやすい
その好例が、2013年に赤字に転落したヤマダ電機だ。2012年と2013年の4~9月期決算を比べると、売上高は10%以上増加。だが、「いきすぎた値下げ」により、粗利は減少した。
ヤマダ電機の赤字転落には、見逃せない点がある。それは「デジタルの不振」だ。
デジタル家電といわれる液晶テレビ・デジタルカメラ・DVDレコーダーは、大ヒットの後、あっという間に価格が下落するのである。
その昔、アナログな職人的技術を駆使して作ったVHSレコーダーは、同性能の製品が半額になるまでに8年を要した。だが、デジタル部品の寄せ集めで作るDVDレコーダーは半年で半額になった。
つまり、アナログは価格が下がりにくいが、デジタルは価格が下がりやすいのである。
この法則は、デジタルデータにも当てはまる。
いまや、新聞も雑誌も漫画も、あらゆるものがデジタルデータとなって、オンラインで売られている。ニュースなどいくらでも無料で見られるようになって、新聞は売れなくなった。
あらゆる国のニュースや情報を、簡単に無料で手にすることができる時代。そんなデジタル(digital)・オンライン(online)・グローバル(global)な“DOG環境”は、いくつかのビジネスに深刻な「価格の下落」をもたらす。
DOGたちと戦うべきか、戦わざるべきか
DOG環境は、次の3つの特徴を持っている。
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- D:デジタルデータの世界では、マネやパクり、コピーが横行する
- O:オンラインの世界では、日本中・世界中のライバルと安値競争が起こる
- G:グローバルの世界では、仕事がコストの安い国に奪われる
この3つが複合的にやってくるのがDOG環境だ。DOGに噛みつかれると「マネされた上で、世界を相手に、安値競争をする」消耗戦に巻き込まれる。