2015年10月号掲載
稲盛和夫経営講演選集 第1巻 技術開発に賭ける
- 著者
- 出版社
- 発行日2015年9月10日
- 定価4,378円
- ページ数466ページ
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著者紹介
概要
京セラをグローバル企業に育て、近年はJALを見事に再建。世界に名を知られる、名経営者・稲盛和夫氏の講演選集(全6巻)の第1巻を紹介する。内容は、過去の講演録から選りすぐった、技術開発を中心とする話。これまで外部に公開されなかった講演も収められ、「稲盛経営」の真髄を知ることができる。第2、第3巻も本書と同時刊行。
要約
「技術開発に賭ける」(1976年)
本書は、稲盛和夫氏による講演の記録である。
* * *
私は、優れた技術を開発するのに何が必要なのかということを、常に考えてきた。
技術開発の成果を生み出すファクターを見ていくと、まず「知識」「学問」が大切であるのはもちろんのことだが、技術開発を進められる「能力」も重要なファクターである。さらに、その人のもつ「考え方」も重要だ。
私は、技術開発の成果は、これら3つのファクターが、「掛け算された積」であると考えている。
学問的、または技術的な知識を多くもち、非常に高い能力をもっている人は優れた技術開発ができると思われがちだが、そうではない。その人がもつ考え方がネガティブなものであった場合、掛け算の結果はマイナスになる。従って、いくらがんばっても、立派な成果が上がらない。
こうしたことを、かねがね考えてきた。その中で、社員にいつも話してきた技術開発をする上で求められる考え方について、話したいと思う。
まずは動機づけが大事
まず一番大切なことは、「なぜ自分が技術開発をしなければならないのか」という動機づけだ。
私は1959年に会社をつくってから、毎日技術開発に努めてきた。最初にそれを支えていたのは従業員を食べさせないといけないという切迫感だった。だが今になって、もう少し次元の高い動機づけが必要なのではないかと反省をしている。
中には、技術開発をする目的が、博士号を取ることだという人もいるだろう。技術開発の意味づけが、このように個人の利益に起因するものだと、博士号を取るまでは一生懸命勉強をするが、その後はあまり勉強をしなくなる。
だから、技術開発を行う動機づけは、もう少し高い次元のものにしなければならない。生きがいになるような動機づけができれば、すばらしい。