2015年11月号掲載
日本のイノベーションのジレンマ 破壊的イノベーターになるための7つのステップ
著者紹介
概要
既存顧客を満足させるのに長けた大企業は、新しい顧客にアピールする「破壊的イノベーション」には、簡単に打ち負かされる ―― 。こう指摘した『イノベーションのジレンマ』の内容を、著者クリステンセン教授の指導を受けた玉田俊平太氏が、わかりやすく解説。日本経済再活性化の願いを込め、破壊的イノベーションの特徴や起こし方などを、事例を交えて説く。
要約
破壊的イノベーションとは何か
大企業は、研究開発能力や幅広い販売網、ブランド力など、多くの優位性を持っている。それゆえ、今ある製品・サービスをより良くするという競争において、大企業は圧倒的な強さを示す。
ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授は、このような「今ある製品・サービスをより良くする=従来よりも優れた性能を実現して、既存顧客のさらなる満足向上を狙う」タイプのイノベーションを「持続的イノベーション」と定義した。
これに対し、既存の主要顧客には性能が低すぎて魅力的に映らないが、新しい顧客やそれほど要求が厳しくない顧客にアピールする、シンプルで使い勝手が良く、安上がりな製品やサービスをもたらすのが、「破壊的イノベーション」だ。
破壊的イノベーションは、さらに2つのパターンに分類できる。
・新市場型破壊
これまで製品やサービスを全く使っていなかった顧客にアピールするイノベーション。ソニーのトランジスタラジオがその典型で、屋外では何も聞くものがなかった時代の消費者を捉えた。
・ローエンド型破壊
既存製品の性能が過剰なまでに進歩し、一般消費者が求める水準を超えてしまった状況で、一部のローエンド顧客にアピールするイノベーション。
例えば、ティファールの電気ケトルがそうだ。最近の湯沸かしポットは非常に高機能で、お湯を沸かすだけでなく、様々な機能がついている。一方、ティファールの電気ケトルには何も付いていない。少ない量のお湯を短時間に沸かせるだけだ。
しかし、これが売れた。それは、実は多くの人にとって、湯沸かしポットの機能は「ティファール程度で十分」だったからだ。容量が少ないからお湯がすぐ沸く。短時間にお湯が沸くのであれば、長時間保温する必要などない。
ティファールの電気ケトルは、これまでの高機能湯沸かしポット機によって過剰な機能を押し付けられていた顧客に対し、必要十分な機能を、安い価格で提供したローエンド型破壊といえる。
アイディアを生み出す
では、破壊的イノベーションを起こすために、どのようなチームを作り、どのようにアイディアを出し、どのような組織で実行すればよいのか。まず、アイディアを生み出す方法からみていこう。