2019年4月号掲載

両利きの経営 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

Original Title :LEAD AND DISRUPT:How to Solve the Innovator's Dilemma

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著者紹介

概要

「両利きの経営」。日本ではクリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」ほど知られていないが、世界では主流のイノベーション理論だ。既存の資産と組織能力を「深化・有効活用」しつつ、新規事業を「探索・開拓」する。すなわち、二兎を追うことで未来を切り拓く、この理論と実践のポイントを、各種事例を挙げて説く。

要約

イノベーションという難題

 過去10年の間に、多くの産業や企業が破壊的変化に遭遇するようになった。50年前、「S&P(スタンダード&プアーズ)500社」の平均寿命は50年だった。それが今日では、ほぼ12年である。

 企業倒産が激増しているのは、破壊的変化の起こる割合が増えているからだ。このような変化を受けて、リーダーの肩には、これまで以上に素早くこの種の脅威に対応しなければいけない、という重圧がのしかかってくる。

ネットフリックスとブロックバスター

 ネットフリックスとブロックバスターの例を考えてみよう。1999年創設のネットフリックスは2015年時点で、会員数6000万人、年間売上高60億ドル以上の世界最大のオンラインDVDレンタルサービスと動画配信の会社となっている。

 一方、2002年時点でブロックバスターの売上高は55億ドル、顧客数4000万人、店舗は6000店。だが、8年後の2010年に破産申請している。

 なぜブロックバスターは失敗し、ネットフリックスは成功したのか?

 その違いは、リーダーたちの変化の捉え方にある。ブロックバスターのリーダーたちは、好立地の店舗でのビデオレンタルという現業の成長と運営に集中し、それを得意としていた。

 対照的に、ネットフリックスのリーダーたちは、自社が手掛けているのはDVDレンタル事業だとは思っていなかった。それよりも、オンラインで映画サービスを提供していると見ていたのだ。

 最初に思いついたビジネスはDVD郵送レンタルサービスだったが、発足初日から重視してきたのは、いかにブロードバンドで届ける会社になるかだ。特筆すべきなのが、新事業を成功させるために、既存事業とのカニバライゼーション(共食い)も受け入れたことだ。

 創業者のリード・ヘイスティングスから見れば、郵送レンタルサービスは同社の事業の一段階にすぎない。目指すのは、インターネットにつながった全デバイスで動画配信を利用可能にすることだ。

ネットフリックス成功の理由

 では、ネットフリックスは、どうしてDVDレンタルから動画配信へと事業を移行できたのか。

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