2015年11月号掲載
1000人の死を見届けた終末期医療の専門家が書いた 死ぬときに後悔すること25
著者紹介
概要
著者の大津秀一氏は、約1000人の死を見届けてきた、終末期医療の専門家である。氏によると、患者の多くが、死ぬ間際まで大小何らかの「やり残したこと」を抱え、そして悔やんでいたという。「生前の意思を示さなかった」「自分が一番と信じて疑わなかった」「子供を育てなかった」…。本書では、終末期に皆が必ず後悔することを25にまとめ、紹介する。
要約
後悔しない生き方とは
私は緩和ケアという、主にがん末期の患者の心身の苦痛を取り除く仕事をしている。ゆえに、私の仕事の大半は、主に薬を用いて苦痛を取り除くことに振り向けられている。
だが、身体的な苦痛は取り除けても、心の苦痛を取り除くことは難しい。私が見届けてきた患者たちは、大なり小なり何らかの「やり残したこと」を抱え、程度の差こそあれ、後悔していた。
その代表的な悩みをここに紹介する。ぜひこれらを早めに遂行してほしい。そうすれば、後悔の少ない一生が用意されるだろう。
生前の意思を示さなかったこと
健康なうちから、いざという時のことを家族と話し合っておくのは重要なことだ。だが、これをしていない人があまりに多い。
世の中では、死ぬ直前まで話ができたり、あるいは動けたりとか、そういう夢物語のようなドラマが放映されているが、あれは事実ではない。
亡くなる頃には、話はできず、意識もない。そして、死期が迫ると「こうしてほしい」「ああしてほしい」と考えるのが面倒になり、またそれを伝えることが様々な理由で困難になる。
では、どうしたらよいのか?
答えは1つ。良心的な代理人を立てることである。つまり、自分が死ぬ瞬間まで、自分に成り代わって意思を表示してくれる代理人を立てるのだ。
さらに言うなら、自分の意思を紙に記しておくと盤石である。「こういうシチュエーションならこうしてくれ」という、事前指示書である。
それでもフォローしきれない問題が出た時は、家族が代理決定することが多い。それを鑑み、家族に己の死生観や医療に求めることをしっかり話しておき、いざという時に極めて自分と近い決断を下してくれるよう育成することを推奨したい。
治療の意味を見失ってしまったこと
医療は何のために存在するのか。