2015年12月号掲載
「未来を読む」ビジネス戦略の教科書
著者紹介
概要
現代は変化が激しい。先を見誤れば、業績が悪化、気づいた時には奈落の底…となりかねない。こんな不確かな時代に重要なのは、「未来を読む」力だ。本書は、起こり得る複数の未来を想定し、企業の戦略、儲ける仕組みへと展開する思考法「シナリオ・プランニング」を指南する。企業の成功例・失敗例を織り交ぜつつ、未来を考えることの大切さと技術を伝える。
要約
未来を洞察するための4つのポイント
未来は、一体どんな世界なのだろうか。
なるべく正確に予測するには、外部環境の変化を分析する必要がある。この外部環境の変化は、大きく5つに分けることができる。
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- 1 社会・消費者の変化
- 2 経済・税制の変化
- 3 政治・政策・規制の変化
- 4 技術の変化
- 5 地球環境の変化
今の世の中は、急に景気が悪くなるなど、劇的な変化が次々に起こる。こうした変化を読み解きつつ、自社のビジネスについて考えねばならない。そのためには、いったん自社のことを脇に置き、客観的に外部環境を分析する姿勢が重要となる。
私は、それを「外から内へ」という意味で、「アウトサイド・イン思考」と呼んでいる。
このアウトサイド・イン思考が、未来を洞察するための大前提だ。そして、未来を洞察するためには、次の4つのポイントを押さえる必要がある。
①未来と正面から向き合う
未来を洞察する上で大事な視点は、上述の通り、まずは外部環境を客観的に捉えることである。
ところが、多くの企業は自社の強みを先に考えてしまう。それも大事だが、強みを先に考えると、外部環境の変化を見誤る可能性が高くなる。
例えば、2005年頃、「アルコール飲料に関する未来」について議論したことがある。この時、「これからノンアルコール飲料が広がるかもしれない」という話が出たが、業界の人たちのコメントは次のようなものだった。「一時的に話題になるけど、ブームで終わり、続いたためしがない」。
ところが2009年、完全なノンアルコールビールが登場すると、市場は一気に拡大した。
その理由として、「味が良くなった」以外に、「若者のアルコール離れ」という数年来の流れがある。そして2007年の道路交通法改正で、飲酒運転の罰則がより厳しくなった。だからこそ、「ノンアルコール飲料の市場が大きくなる」という未来の可能性が浮かび上がってきたのだ。
ところが、業界に近い人ほど、変化に否定的になる。それは、主観的に考えてしまうからだ。今までの自分たちの経験を反映させると、ノンアルコール飲料は長続きしないという結論になる。