2015年12月号掲載
見抜く力 リーダーは本質を見極めよ
著者紹介
概要
リーダーの仕事は、「正しく見る」ことから始まる。本質まで正しく見抜くことができて、初めて正しい指示が出せる ―― 。赤字だったキヤノン電子を高収益企業に変身させたカリスマ社長が、「見抜く力」の身に付け方を伝授。利益が出ない原因や人間の本質、時代の変化などをいかに見抜くか、ビジネスパーソンに有用な眼力の磨き方を、自らの経験をもとに語る。
要約
本質を見抜く力
物事を正しく見ること、表面だけでなく本質まで見抜くことは、簡単ではない。しかし、表面の事象だけを見て、わかった気になる人が多い。
そうした浅い見方や間違った見方を出発点としてリーダーが指示を出せば、組織はガタガタになる。だからリーダーは、「見抜く力」を身につけねばならない。では、どうすれば身につくのか。
見抜く力(洞察力、見識)=深い知識(知恵)+正しい経験の積み重ね
知識を広げるため幅広い読書をし、絵画や音楽などで常に「本物」に触れる。その中で、単なる知識を簡略化して、いつでも使える「知恵」を身につけようとし続ける。そして、あらゆる仕事で本質を見抜くように正しい経験を積み重ねる。
そうすることで、見抜く力が身についていく。
利益が出ない原因を見抜く
1999年、私はキヤノン電子の社長に就任した。
本社に行って驚いた。売上高経常利益率は1%ほどで、数字の上では何とか黒字だったが、借入金が約200億円あり、在庫も倉庫に山積みだった。
問題解決のアプローチで大事なことは、自分で理解し、扱えるサイズにまで、問題の本質を切り分けて考えるようにすることである。
私は、ダメな会社や組織には、次の3つの共通する特徴があると考えている。
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- ①トップ(リーダー層)がたるんでいる
- ②受動的・指示待ちの人が多い
- ③売上の20~30%のムダがある
キヤノン電子の再建に当たっても、問題の本質をこの3つに分けて考えることにした。
会社や部門の立て直しで何より大事になるのは「このままでは会社がダメになる」という危機感の共有であり、それをバネに全社一丸となって再建に取り組む姿勢、情熱である。