2016年4月号掲載
ザ・チェンジ・メイカー 世界標準のチームリーダーになる49のレッスン
著者紹介
概要
世界が「第4次産業革命」で様変わりする中、取り残された感のある日本。それを憂える日系2世の起業家が、高い基礎能力を持つ日本人こそ、変化を生み出す「チェンジ・メイカー」に相応しい、世界をリードせよと呼びかけた。「逆境を歓迎せよ」「前例主義を排除せよ」など、変化を発想し、成功するための秘訣を示す。
要約
チェンジ・メイカーになる!
インターネットが普及した今、世界は「第4次産業革命」の真っ最中だ。IoT、人工知能、クラウド、ビッグデータ…。これらがもたらす社会変化は、過去にないほど大きなものとなるだろう。
そんな大きな変革の時代に求められるのは、「変化を生み出す力」に他ならない。本書では、日本人が「チェンジ・メイカー」として世界をリードするためには何が必要か、考えていきたい。
逆境を歓迎せよ、好機は危機の中にのみある
私がまだベンチャー社長だった時、会社に泥棒が入ってパソコンが盗まれた。ほどなく犯人は逮捕されたが、弱ったのは、その後。犯人の拠点には数百台ものパソコンが集められており、私のパソコンがどれなのか、わからない。
当時、私が暮らしていた米カリフォルニアの警察にIT専門のチームはなく、お手上げの状態。いつパソコンが返ってくるかわからない。そこで私は、ボランティアを申し出た。パソコンを1台1台起動して元の持ち主を特定する手伝いだ。そして数日がかりで、元の持ち主に返していった。
この事件を契機に私の会社は、それまでの受注スタイルのプログラミング会社から、サイバーセキュリティの専門企業へと生まれ変わった。需要に対して供給が追い付いていない「商機」に気づいたためで、実際、その後の会社の急成長には我ながら目を見張るほどだった。
つまり、言いたいことはこうだ。人間や組織が大きく変わる瞬間とは、予想だにしなかった逆境に対して、マニュアルにない知恵を絞った時である、ということだ。
状況が悪いからこそ、前例にない知恵を振り絞ることができる。逆境を歓迎する人こそが、次の時代の扉を開けるチェンジ・メイカーとなり得る。
ルールがあるのは、信頼がないからである
日本には、不整脈の治療に利用する心臓ペースメーカーを作る企業がない。手術用ロボットのような治療用ハイテク機器でも日本は後進国だ。
なぜ、日本のメーカーはこの分野にあまり力を入れてこなかったのか。それは「信頼」という言葉で説明ができる。
もともとハイテク機器には、一定の割合の不具合や故障がつきものである。いかに努力をしても、完全にゼロにすることは不可能と言うしかない。
しかし日本の消費者は非常に神経質である。仮に、テレビや新聞のニュースで「A社製のペースメーカーで事故があった」と報道されたら、A社はメディアに袋叩きにされてしまうだろう。