2016年6月号掲載
TEAM OF TEAMS 複雑化する世界で戦うための新原則
Original Title :TEAM OF TEAMS
- 著者
- 出版社
- 発行日2016年4月4日
- 定価2,420円
- ページ数467ページ
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著者紹介
概要
「世界で最も優秀」と称される、米軍の統合特殊作戦任務部隊。だがイラク戦争では、寄せ集めの集団であり、戦力も規模も格下のイラクのアルカイダ(AQI)に苦戦した。なぜ、AQIを倒せないのか? 原因を分析した米軍の元司令官が、あらゆる組織が現在直面する状況、従来型の組織に潜む問題点について語る。
要約
21世紀のルール
1970年代から繰り返されてきたテロ集団との戦争は、2001年に起きた9.11を境に激化した。
エリート軍事組織である統合特殊作戦任務部隊(特任部隊)はまずアフガニスタンに派遣され、戦いが拡大する中、その活動は広く中東に及んだ。
2003年春、我々はイラクに入り、サダム・フセイン体制を倒すために、従来型の大規模な軍事作戦を展開した。そして、それからの数年間、我々は苦戦にあえいだ。
ベスト・オブ・ベスト
イラクのアルカイダ(AQI)は、従来の軍隊とは別のタイプの、分散されていて敏捷な動きをする小武装集団で構成され、大きな脅威だった。
我が特任部隊は、世界最強の軍隊が持ついくつかの特殊作戦部隊の中でも、最も優秀な人材をまとめ上げたものだ。つまり、我々こそが世界で最も優秀な特殊作戦戦闘部隊 ―― 「ベスト・オブ・ベスト」であることは間違いなかった。
計算上は、AQIと特任部隊とでは比べものにならない。我が部隊は規模が大きく、装備も立派だった。一方のAQIは、地元の人間を採用しなければならず、お粗末な装備しかなかった。我々は厳しい訓練を耐え抜いてきたが、彼らはイスラム神学校で生半可な知識を身につけているだけだ。
だが、我々は戦いに敗北しつつあった。なぜ我々は、資源に乏しい反乱集団に勝てないのか。
チームの中のチーム
この戦争は、20世紀のどんな戦争とも違った。AQIという組織は、相互ネットワークに密に覆われた21世紀の情報化社会の申し子といえる。彼らの行動は、一般的に「正しく」「効果的」と考えられているやり方から大きく外れている。しかし、それがうまく機能している。
この戦いの中で我々は、戦争や世界の仕組みに対する従来の認識を大きく改める必要があった。そこで、これまでの組織形態を解体し、まったく別の流儀で組み立て直すことになった。つまり硬直した組織を有機的で柔軟な組織へと取り換えた。それこそが、複雑な脅威に対処するための唯一の方法だったからだ。
具体的にいうと、透明性の高い情報共有と決定権の分散化という方針をもとに、軍を根底から構造改革したのである。そして、縦割り組織とヒエラルキーの障壁を取り壊した。我々は組織の中で最も小さい単位の行動を観察し、それを数千人の組織に広げる方法を探しだした。
つまり、我々はいわゆる「チームの中のチーム」 ―― 小チームに特有の敏捷性を備えた大きな部隊 ―― になったのだ。