2016年8月号掲載
FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス
著者紹介
概要
金融サービスはもちろん、ビジネス全体、そして社会まで変えてしまう可能性を秘めた「フィンテック」。この、金融とテクノロジーの融合によって、実際に何がどう変わるのか? 「個人財務管理」「後払い決済サービス」など、フィンテックが生み出す金融サービスの最新事例を紹介するとともに、社会の未来について考える。
要約
新しい金融サービス
「フィンテック(FinTech)」。これはフィナンシャル・テクノロジーという言葉を縮めたもので、直訳すれば「金融に関するテクノロジー」だ。
では、フィンテックとは具体的にどんな現象で、私たちの社会をどう変えていくのか?
「ソーシャルレンディング」という発想
フィンテックの中でも注目されているのが「ソーシャルレンディング」の発想である。
「ソーシャルな融資(レンディング)」という名前の通り、ソーシャルレンディングでは貸し手と借り手をつなぐことが行われる。サービス提供者が果たすのは仲介者としての役割で、誰にお金を貸すのかは貸し手が決める。
例えば、2007年に立ち上げられた米国のレンディングクラブは、個人や中小企業向けのローンを提供しており、創業から2015年12月末までの融資額合計は約160億ドル(約1.8兆円)。そうした融資のほぼ半数が、レンディングクラブの利息の安さを目当てに、他のローンからの借り換えを目的として行われたものだ。
ここからもわかるように、借り手として見た場合のレンディングクラブ最大の特徴は、利息の安さである。これには、いくつかの理由がある。
最大の理由は、ソーシャルレンディングが行うのがマッチングに過ぎないことだ。銀行の場合、預金の金利(銀行が払うお金)よりも融資の金利(銀行が得るお金)の方が高ければ儲かる。さらに伝統的な銀行は、物理的な支店やATM網など多額の固定費を抱えているため、融資の金利をなるべく高くしようというインセンティブが働く。
一方、レンディングクラブの収入源は、マッチングによって得られる手数料であり、安い金利に惹かれて多くの人々がサービスを利用してくれる方がありがたい。銀行のようなインセンティブは存在しないわけだ。
さらに、レンディングクラブのサービスはオンラインで完結するため、莫大な固定費のかかる支店網を必要としない。また審査業務をはじめ、多くの業務が自動化されており、その分の人件費も浮く。その結果、レンディングクラブは、非常に効率的な経営を実現することに成功している。
賑わう「PFM」サービス
「個人財務管理(PFM)」もフィンテックの主要領域の1つだ。これは、文字通り個人を対象に、お金の管理を支援するサービスである。
最も基本的なのは、複数の金融サービスの口座を統合し、一元管理できるようにするサービスだ。例えば、自分の銀行口座とクレジットカードのアカウントを紐付けておき、日々の収入と支出の状況をオンラインで確認するといった具合である。