2016年11月号掲載
人工知能が金融を支配する日
著者紹介
概要
ここ数年で、人工知能は急速に進歩した。その影響を一番最初に、そして一番大きく受けるのが金融業界だ。分析によれば、今後10~20年で融資係、クレジット・アナリストの仕事がロボット化される確率は98%。すでに市場では「ロボ・トレーダー」が闊歩する。金融に人の居場所はあるのか? 業界の現在と未来を見通す。
要約
金融とテクノロジー
世界的に広がったフィンテック・ブーム。
「フィンテック(FinTech)」という単語は、フィナンシャルとテクノロジーをつなげた造語だが、皆さんは、金融とテクノロジーの関係にどんなイメージをお持ちだろうか。
日本では、クラウド家計簿やクラウド会計など、主にインターネットを通じた個人や中小企業向けの便利なサービスという印象が強いのではないか。
しかし、フィンテックを単なる便利なサービスと捉えてはいけない。海外では、今や金融業の本業を侵食し始めているのだ。
金融のあり方を根本的に変えるビジネス・モデル
欧米のフィンテック企業は、日本より遥かに多彩で、金融のあり方を根本的に変える可能性のあるビジネス・モデルも登場している。
例えば、レンディング・クラブ。個人の投資家が少額の資金を、他の個人や中小企業に貸すという画期的なビジネス・モデルで急成長している。
レンディング・クラブのように個人が個人に直接融資を行うのは、究極の直接金融ともいえる。これは、間接金融を行う銀行や、直接金融を仲介し手数料を得ている証券会社にとっては、本業の商売を奪う可能性のあるビジネス・モデルで、金融のあり方を根本的に変える可能性を感じさせる。
つまり、コンピュータとウェブのプラット・フォームを運営する企業が既存の銀行のビジネスを侵食し始めていると捉えることができるのだ。
しかも、このようなフィンテック企業が利用するテクノロジーのレベルは、さほど高度なものではない。20世紀末のウェブ技術が中心だ。
人工知能などが本格的に利用され、既存の金融機関を破壊するのはこれからのことなのだ。
裏舞台に回る最高の人工知能技術者
近年、グーグル、フェイスブック、トヨタ自動車など、世界の名だたる企業が人工知能関連会社への投資や研究所の設立を行っている。