2016年8月号掲載
ウソはバレる 「定説」が通用しない時代の新しいマーケティング
Original Title :ABSOLUTE VALUE
- 著者
- 出版社
- 発行日2016年6月16日
- 定価1,980円
- ページ数336ページ
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著者紹介
概要
「『定説』が通用しない時代の新しいマーケティング」が副題。ソーシャル・メディアが発達し、消費者が色々な情報を握る今日、ブランディング、ロイヤルティなど、従来のマーケティング手法の重要性は低下していると指摘。消費者の意思決定の仕方の変化、これからマーケターに必要な新しいフレームワークについて詳述する。
要約
時代は「相対」から「絶対」へ
「企業のブランドは重要」「ロイヤルティを築くことがマーケターの日々の大事な仕事」「過剰な選択肢は人々を麻痺させる」…。
これらはマーケティングの常識だ。しかし、こうした常識が今、通用しなくなりつつある ―― 。
無名ブランドのパソコンが売れた理由
「ASUSTeK」。略して「ASUS」は、ノートパソコンやゲーム機の製造を請け負う台湾企業だ。その会長ジョニー・シーは、自社ブランドでラップトップを発売することにした。
ASUSを知る消費者はほとんどいない。常識では、人々に財布の紐を緩めさせるには、信頼できるブランドの構築が不可欠とされる。そして、ブランドの構築には膨大なコストがかかる、とも。シーの友人や同僚は、ブランド認知、知名度、大量広告なしでは成功は望めない、と警告した。
ところがその後、2012年に、ASUSはパソコンの全世界の出荷台数で第5位まで登りつめた。
どうして、ブランド認知がないも同然だった企業が、これほどの成功を遂げられたのだろう?
消費者の意思決定の仕方の根本的な変化が追い風となっている、というのが私たちの見方だ。
「相対価値」と「絶対価値」
かつての消費者は、ブランド名、定価、その企業の過去の利用体験といったものと照らし合わせ、「相対的」に判断を下していた。しかし現在では、ますます製品やサービスの「絶対価値」に基づいて判断することが増えている。
ここでいう絶対価値とは、ある製品の普遍的な真実という意味ではなく、消費者が体験する製品の実際の質という意味だ。つまり、製品を実際に体験する前に、「たぶん使い心地はこんな感じだろう」とわかってしまうのが今の時代なのだ。
相対評価から絶対評価への変化は、ある点でASUSにメリットをもたらす。
昔であれば、消費者はそのブランドの過去の利用体験を、質の主な判断基準にすることが多かった。例えば、新しいラップトップの購入を検討する場合、まず思い浮かぶ情報は「前にデルのラップトップを使っていたけれど、特に問題はなかった」というものだろう。その結果、デルの新作もきっと問題ないに違いない、と結論づける。