2016年10月号掲載

[新装版]知命と立命 安岡正篤 人間学講話

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著者紹介

概要

東洋思想の大家、安岡正篤氏による人間学講話集。氏は言う。人は学問修養をして自分を知らないと動物的存在になり、せっかくの一生を台無しにする、と。「運命」を良きものとするか否かは、自分次第。学問修養によって、人間を支配する因果関係を知り(知命)、それを操縦して自分の運命を創造する(立命)ことは可能だと説く。

要約

何のために学ぶのか

 学問というものは、3つに分けることができる。

 1つは「知識の学問」である。これは我々の理解力・記憶力・判断力・推理力などの働きによって、誰にでも一通りできるものだ。

 そして「智慧の学問」。経験を積み、思索反省を重ねて、人間としての体験の中からにじみ出てくる、もっと直観的な人格的な学問である。

 それを深めると、徳に根差した「徳慧の学問」になる。この徳慧の学問、すなわち広い意味において道徳的学問・人格学、これを総括して「人間学」というならば、この人間学が盛んにならないと本当の文化は起こらず、民族も国家も栄えない。

人間学の第1条件

 現代人は、学問を知識の学問にとどめて、しかも、それを立身出世などの手段としている。しかし、学問の本質はそうではない。第1条件は「人間の本質的完成のため」でなければならない。

 荀子は、本当の学問というものは、「窮して困しまず、憂えて意衰えず、禍福終始を知って惑わざるが為なり」と言っている。

 窮して苦しまない、憂えて心衰えない、何が禍いで、何が福であり、どうすればどうなるかという因果の法則を知って、人生の複雑な問題に直面しても惑わない、という条件を提出している。

 学問の第1条件はここにある。窮すること、心配事は、世に処する以上、免れないことである。しかしそれだからといって、精神的にまいってしまっては、我々の人格の自由や権威はなくなる。

人間学の第2条件

 第2の条件は、こういう精神・学問を修めることで、「自ら靖んじ、自ら献ずる」ということだ。

 これは『書経』の中の言葉で、内面的には良心の安らかな満足、それを外に発しては、世のため、人のために自己を献ずるということである。

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