2017年2月号掲載
日本電産 永守重信社長からのファクス42枚
著者紹介
概要
著者の川勝宣昭氏は、日本電産グループ会社の元再建担当役員。赤字会社の再建に際しては、カリスマ経営者・永守重信氏から直々の指導を受け、毎日のように届く叱咤激励のファクスは7年で数百通にも上ったという。そうした形で叩き込まれた、「スピードと徹底」の永守流経営の神髄を、示唆に富むその“語録”とともに紹介する。
要約
リーダーはどうあるべきか
私がこの本で伝えたいことは、ビジネスの世界でリーダーはどうあるべきかということだ。
経営者というトップリーダーに、また、部下を持ち組織を引っ張るポジションにある中堅リーダーに知っておいてほしいこと。それを、カリスマ経営者の1人である永守重信氏(日本電産会長兼社長CEO)の「語録」という形で伝えていこう。
紹介する「永守語録」のほとんどは、私が日本電産からグループ会社に派遣され、企業再建の現場に立った7年の間に、永守社長から毎日のように送られてきた数百通にのぼるファクスの中から選んだものである。
「意識改革を徹底せよ。それが企業カルチャーになるまで」
日本電産は1973年の創業以来、50社以上のM&Aを行ってきた。それらを今まで1社の例外もなく、1年以内に黒字会社に変身させてきた。
通常、赤字会社の再建を銀行が行う場合、資産の切り売り、人員リストラから始まる。しかし、日本電産の再建は、資産の切り売りも人員リストラも一切行わない。行うのは「意識改革」だ。
どの赤字会社も、判で押したように同じ特徴を持っている。社員は下を向いて仕事をし、慢性未達病に侵され、負け犬根性・負け戦慣れしている。
それを意識改革によって、社員が上を向いて仕事をするように変えるのだ。
意識改革を経営者自らが先頭に立って行うと、1年を待たずして、組織に“化学変化”が起こる。今まで顧客志向ではなく社内志向で、社内も部門間の揚げ足取りに多くの時間を割いていた会社が、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」の日本電産流カルチャーに同化し、顧客志向、スピード志向の会社に染まっていく。
では、どうすれば意識改革が起こるのか?
意識改革は、組織の最小単位の個人が変わらないと、組織も変わらない。そこで、個人の3つの要素、「価値観・思考様式・行動様式」を変える。
この3つの中で最も重要なのが、価値観だ。高いレベルの価値観を持つ集団にするためには、経営者の社員集団に対する啓発活動が必要だ。これを経営者による価値観の「擦り込み」という。