2017年3月号掲載
共感PR 心をくすぐり世の中を動かす最強法則
著者紹介
概要
Twitter、Facebookなどが普及した今日、誰もが主役となり、自分の五感で受け取った情報の発信者になることを楽しむ。そんな時代ならではの新しいPRのあり方、仕掛け方を、事例を挙げて解説した書だ。予算がなくても、無名でも、人の「共感」を呼ぶ魅力的な情報を生み出せば、「クチコミ」の力でブームは起こせると説く。
要約
「ジャポニカ学習帳」のPRが成功した理由
「バズる」 ―― 。これは、PR業界で「話題になっている」「注目されている」というニュアンスで使われる言葉で、ある商品やサービスが「クチコミ」の力で爆発的に広まることを意味する。
今や、世の中を動かしているのは、クチコミが先で、テレビや新聞が後。人から人へ伝わるクチコミはもちろんだが、ネットのニュースやブログ記事、あるいはTwitterなどのSNS上から広まる“ネットクチコミ”の威力も絶大である。
「これからのPR」では、こうした新しいメディアを上手に使いながら、新聞やテレビなど旧来のメディアを巻き込み、能動的にバズらせることが求められる。そして、最も重要なポイントは、人をいかに共感させられるかということ。これを実現するのが「共感PR」だ。
誰もが知っている定番商品をどう仕掛けたか?
では、バズらせるとは具体的にどういうことか? 「ショウワノート」を例に詳しく説明しよう。
ショウワノートと聞いてすぐにピンとこない人でも、同社がつくる「ジャポニカ学習帳」を知らない人はいないだろう。カブトムシやチョウ、花などの大きなカラー写真が表紙に載っているノートで、1970年の発売以来、累計12億冊も販売してきた、学習帳の代名詞的存在だ。
2014年、私はショウワノートからこんな依頼を受けた。「来年、ジャポニカ学習帳が発売開始から45周年を迎えるので、このことをPRしたい」。
真っ先に思ったのは、日本人の多くが知っているブランド力のあるノートだということ。だから、「このトップブランドは、いかに築き上げられたのか」ということをアピールするだけでも、新聞媒体などで取材される確率は高いと思った。
ただ、それだけでは世の中を動かすパワーはない。大勢の人たちの関心や共感を巻き込む「仕掛け」が必要だ。そう考えてさらにヒアリングを続けるうちに、「ジャポニカ学習帳の表紙から、昆虫が消えた」という話が出てきたのである。
私自身、この話には衝撃を受けた。小学生の頃に愛用していたノートの表紙がカブトムシやクワガタなのは当たり前の感覚で、今も当時と同じものが文具店で手に入ると思い込んでいたからだ。
この話を皆知っているのか? そう思い、リサーチすると、ほとんど知られていない情報だった。ジャポニカ学習帳を知る大人には、ちょっとした“事件”と言ってもいい出来事なのに…。
このように多くの人が強い関心を抱くであろうと予測できること、特に驚きや意外性を持って伝わる情報は瞬く間に拡散する可能性を秘めている。