2017年5月号掲載
自動運転車の普及で世界はどう変わるか? ドライバーレス革命
Original Title :Driverless:Intelligent Cars and the Road Ahead
著者紹介
概要
副題「自動運転車の普及で世界はどう変わるか?」。ここ数年で急速に進歩している「ドライバーレス・カー」(ドライバー不要の完全自動運転車)について述べた書である。いつ本格的に走り始めるのか? 駐車や通勤、仕事にどんな影響を及ぼすのか?人工知能に詳しい著者たちが、来るべき“自動運転社会”の姿を描き出す。
要約
ドライバーのいない世界
現在の車は、自分では何もしない。その標準的な仕様(4輪、車体、エンジン)は、約100年前に発明されて以来、大きく変わっていない。
しかしその他の世界では、大変動が起きている。ソフトウェアはますます優秀になり、通信ネットワークはあちこちに張り巡らされ、高性能センサーは年を追うごとに小さく、安くなっている。
その結果、ロボットテクノロジーや人工知能(AI)が大きく進歩し、車が、自分で行き先までたどり着く移動ロボットになろうとしている。
自動化のスケジュール
「ドライバーレス・カー」の普及 ―― ドライバーのいない車への移行は徐々に進むだろう。
自動車市場調査会社IHSの推測によれば、自動運転車が販売されるのは2025年頃から。2035年までに新車の約10%が、2050年以降はほぼすべての新車が自動運転車になるという。
数年で現実になるとの見方もあるが、世界中にある従来の車をすべてドライバーレス・カーに置き換えるのは並大抵のことではない。米国だけでも、路上を実際に走っている車は約2億5000万台。そのうち廃棄されるのは毎年1300万~1400万台。単純に計算しても、人間が運転する従来の車がすべて路上から消えるまでに、20年近くかかる。完全自動運転車への移行が完了するのに数十年かかるのは間違いない。
ドライバーのいないタクシー
世界中の道路を走る数十億台もの車が、ドライバーレス・カーに変わったとしたら、まず気づくのはその静けさだろう。サイレンやクラクションは、人間が運転する場合にのみ意味を持つ。
この未来の世界では、道路はゴルフカートのような形をした小さな車でいっぱいだ。タクシーを呼びたければ、携帯電話のボタンを押せばいい。数分後には、無人運転のタクシーが来てくれる。相乗りに同意していれば、同じ方向へ向かう客がすでに1人か2人乗っているかもしれない。
乗客はタクシーに乗ると目を閉じる。タクシー内に流れる宣伝がややうっとうしいが、車内ではゆったりとくつろげる。目的地に着けば、料金は自動的に口座から引き落とされる。運転手がいないため、チップもいらない。相乗りを認め、流れる宣伝を我慢すれば、料金はかなり安くなる。
都市の住民がマイカーなどを使わず、共用の自動運転タクシーを利用すれば、都市の道路を走る車の台数は90%減るという予測もある。
駐車の問題
ドライバーレス・カーを導入すれば、駐車場が必要なくなり、都市生活が向上する。