2020年10月号掲載
アフターデジタル2 UXと自由
著者紹介
概要
今、世の中は、デジタルが隅々まで浸透した「アフターデジタル」社会へと突き進んでいる。あらゆることがオンライン化されれば、産業構造も大きく変わる。企業は、どう対応すべきか? アフターデジタルの概要や、デジタルトランスフォーメーションで陥りがちな罠等々を、この分野で先を行く中国企業の事例などを交え、解説する。
要約
世界中で進むアフターデジタル化
今日、「アフターデジタル」という社会変化が進んでいる。これは、どのような転換で、何を引き起こすのだろうか。
オフラインのない状態が来る
中国や米国、一部の北欧や東南アジアの国々では、日常の支払いや飲食、移動などの行動がモバイル(オンライン)で完了できるようになった。
例えば中国では、都市部の現金使用率は5%以下で、モバイルペイメント(決済)の利用が浸透している。レストランでは注文から支払いまでスマートフォンで完結する。シェアリング自転車の利用も同様だ。
ここで読み取るべきことは、もともとオフライン行動だった生活が次々とオンラインデータ化し、かつ、個人のIDにひも付けられ、膨大な量の行動データが活用可能になるということだ。
そう捉えると、日本もだんだんとそうなっていることが実感できるのではないか。
アフターデジタルという考え方
「アフターデジタル」。この言葉は、「日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、その立脚点がそもそも間違っているのではないか」という問題提起を含んでいる。
ウェブサイトやアプリ、SNSなどの純粋なオンライン接点が多くなると、純粋なオフラインの顧客接点が少なくなる。すると、リアル(オフライン)はデジタル(オンライン)に比べて、どんどん存在感が小さくなっていく。
だが、日本のDXは、「リアルを中心に据えて、デジタルを付加価値と捉える」という「ビフォアデジタル」的な考え方に根差している例がほとんどだ。「店舗でいつも会えるお客様が、たまにアプリを使ってくれる」といったイメージだ。
このリアルとデジタルの接点の主従関係を逆転させて考える必要があるというのが、アフターデジタルというコンセプトになる。
とは言え、「リアルが重要でなくなる」わけではない。リアルはしっかりと残る。なぜなら、デジタルが得意なこととリアルが得意なことが異なるからだ。感動的な体験や信頼を獲得するといったことは、デジタルよりもリアルの方が得意だ。
オンラインとオフラインを融合させる「OMO」
こうしたアフターデジタル社会において、成功企業が共通で持っている思考法を「OMO」(Online Merges with Offline)という。