2017年5月号掲載
模倣の経営学 実践プログラム版 NEW COMBINATIONS 模倣を創造に変えるイノベーションの王道
著者紹介
概要
「模倣」には、ネガティブなイメージがある。だが、ビジネスの世界を見ると、偉大な企業は模倣がうまい。優れた手本からヒントを得て独自の仕組みを築いたり、悪い手本を反面教師にイノベーションを起こしたり。本書は、こうした「創造的な模倣」について説いた『模倣の経営学』に、実践的な解説を増補、再構成したもの。
要約
模倣のパラドクス
「模倣は独創の母である」といわれる。
モーツァルトは、他人の音楽の模倣から始めて、ついには独創的な音楽を生み出したそうである。
芸術的な経営も模倣から始まるのかもしれない。例えば、クロネコヤマトの宅急便のアイデアは、牛丼の吉野家から生まれた。宅急便を立ち上げた小倉昌男氏は、当時、牛丼一筋に絞り込んで成長してきた吉野家を見て、「取り扱う荷物の絞り込み」というアイデアを思いついたという。
独創性を追求するには模倣が必要
一般に模倣というと、独自性や創造性とは逆のものと思われがちだ。だが、一説によれば、模倣が良くないことだと思われるようになったのは、近世になってからだそうだ。古来、お手本を丸写しすることは学習の基本として尊ばれていた。
小説、絵画、あるいは音楽などでも、独創的だと評価されるもののほとんどは、過去の偉大な作品を参照なり引用なりしている。その上で、差異や独自性を強調しているのだ。
すなわち、独自性を追求するからこそ、逆に、模倣の力が大切だということになる。
我々は、模倣の能力を高めなければならない。
新しい発想を得る
「~とかけまして…と解く。その心は○○」
これは、落語における「なぞかけ」の「お題」である。例えば、よくあるなぞかけに、「鉄」とかけて「若者」と解く、その心は「アツイうちに打て」というのがある。どちらも鍛え上げるタイミングが大切だということである。
一見すると関係のない2つの言葉を選び、その言葉の共通点をオチとして示すという知的遊びだ。実は、ビジネスにおける新しい結びつきというのは、このなぞかけと同じようなものである。
例えば、「レンタルビデオ」とかけて「消費者金融」と解く。その心は「どちらも高利貸です」といった感じだ。