2017年7月号掲載
3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」成功への道
著者紹介
概要
大企業が大型の新事業を創る ―― 。成熟社会の日本では難しい、この課題に応えるのが「ビジネスプロデュース」。数々の事業創造型プロジェクトを手がける著者たちが提唱する方法論だ。本書では、そのうち特に難しい「構想策定」と「フック」(顧客を惹きつけるツール)、「回収エンジン」(お金を儲ける手段)の設計手法を解説する。
要約
事業創造を促す「ビジネスプロデュース」
1990~2013年の間に、時価総額が1兆円を超える企業の数がどれだけ増えたかを、日米で比較したデータがある。
それによると、日本では54社から100社(うちベンチャーは3社)だが、米国では28社から426社(うちベンチャーは121社)に増えている。
2013年時点で時価総額が1兆円以上に成長した日本のベンチャーは、ソフトバンク、ヤフー、楽天の3社のみ。米国は、グーグル、アマゾンなどの1兆円クラスのベンチャーが121社もある。
また、米国では大企業も時価総額を拡大させている。米国の大企業が大きく成長できたのは、本業を成長させたことだけが理由ではない。本業を凌駕する新しい事業を次々と創造してきたからだ。
その証拠に、GEは「ゼネラル・エレクトリック」の頭文字だが、電気製品はもうほとんど作っていない。IBMは「インターナショナル・ビジネス・マシーン」の頭文字だが、こちらもマシーンメーカーからソフトメーカーに変貌している。
大企業といえども、大きく成長するためには、本業以外の事業を新たに創造し、大きく成長させる必要がある。だから事業創造が重要になる。
大企業で事業創造がうまくいかない理由
では、日本の大企業で事業創造がうまくいかないのはなぜか。理由の1つとして、新たに事業を生み出すために押さえるべきポイントの劇的な変化を理解できていないことを挙げたい。
日本の大企業によるかつての新規事業は、成長する他業界への進出が主だった。住宅業界が成長していれば、そこにトヨタ自動車やパナソニックがトヨタホームやパナホームを作って進出した。しかし、現在の日本では、あらゆる業界の成長が鈍化し、成熟期を迎えているため、この方法での事業創造はほぼできなくなっている。
今後の事業創造は、異なる業界の融合領域から新たな事業コンセプトやモデルを創出する「融合型」となる。業界Aと業界Bが融合することで、新たな業界Cを生み出すような事業創造だ。だから、1社単独で事業創造を行うのではなく、何社かと連携しながら事業創造を行うことになる。
業界を超えた検討をすれば、お互いの業界の市場規模はもちろん、両者の市場規模の合計以上の市場が見えてくることも多い。このようなチャンスをみすみす見逃すのはもったいない。
こうした考え方をビジネスにつなげていくのが、「ビジネスプロデュース」というコンセプトだ。