2017年12月号掲載
日経テクノロジー展望2018 世界を動かす100の技術
概要
2018年以降、世の中に影響を及ぼすテクノロジーとは? 日経BP社の技術系専門誌・サイトの編集長たちが、世界中の様々な技術の重要トレンドを展望した。ITを使ったキャッシュレス決済、バクテリアでひび割れを自動修復させるコンクリート、同時通訳機能付きのイヤホン…。具体例を挙げ、テクノロジーの未来を描き出す。
要約
世界を動かすテクノロジートレンド
様々なテクノロジーの融合が進み、人、生活、産業、そして地球環境に至るすべてが再生していく ―― 。
2018年以降のテクノロジー動向と、それが世の中に与える影響を一文で書くとこう表現できる。
それぞれ別の領域で育まれてきたテクノロジーが融合し、双方の領域を変えていく。長年使われてきた製品や仕組みが、テクノロジーを取り入れることで生まれ変わる。
本書では、そうした今後の重要トレンドを11、選び出した。その中から、いくつか紹介しよう。
ビッグデータが値段を変える
2018年以降、人の行動や好みなどを記録したビッグデータの利用によって、消費者ごとに対価を変えられる商品やサービスが続々登場する。
例えば、安全運転をするドライバーの保険料がお得になる、「テレマティクス自動車保険」が登場する。テレマティクスとは、自動車をネットワークにつなぎ、様々なサービスを可能にすること。自動車のスピード、ブレーキ、アクセル操作といった運転挙動データを通信を経由して集め、分析結果に基づき、保険料を調整する。
トヨタ自動車は2019年をめどに、日米中の3カ国で販売するほぼすべての乗用車に通信機能を標準搭載する方針を示している。車の通信環境が整備されれば、安全運転に応じて割安になる自動車保険の市場は急速に拡大するだろう。
保険だけではない。融資や宿泊といった以前からあるサービスが、ビッグデータによって新たな価値を生み出すようになるだろう。
ぶつからないクルマ
「ぶつからないクルマ」は自動車業界にとって究極の目標だが、ここへ来て様々な技術が登場し、段階的に実用化される見通しが出てきた。
ドイツ・アウディは世界で初めて、「レベル3と言われる自動運転」を2018年に実用化すると発表している。レベル3のクルマはすべての運転が自動になるが、運転者は緊急時に運転に戻る態勢を維持していなければならない。
ぶつからないクルマは様々な自動化技術を組み合わせて使う。すでに普及している「自動ブレーキ」の進化に加えて、「自動操舵」と呼ばれる車線変更など操縦支援の技術、さらに「自動駐車」がすでに登場しつつある。