2018年2月号掲載
マネタイズ戦略 顧客価値提案にイノベーションを起こす新しい発想
著者紹介
概要
ビジネスは、顧客への「価値提案」と「マネタイズ」(収益化)の両輪からなる。しかし企業の多くは、顧客を満足させる価値提案には熱心だが、「利益を得る」ことはおざなりにしがち。このマネタイズのポイントを、テスラ社等の先進事例を交えて説いた。顧客価値とマネタイズ。両者が融合すれば、ブレークスルーも夢ではない!
要約
なぜ、マネタイズが重要なのか?
モノやサービスは良いのに売れない、売れても利益が薄い ―― 。このような製品は枚挙にいとまがない。その背景には何があるのか?
顧客への「価値提案」と「マネタイズ(収益化)」の両方がそろって初めて、魅力的な価値創造ができる。だとすれば、顧客への価値提案とマネタイズのミスマッチが起きているに違いない。
価値提案とマネタイズが調和しない理由
2017年4月、ファン待望の「レゴランド」が名古屋にオープンした。しかし、チケットが高すぎるとして客足が伸びなかった。1カ月後、レゴランドは入場料を最大で実質25%値下げした。
「レゴ」という強烈な価値提案(コンテンツ)で、良質のテーマパークをつくったにもかかわらず、マネタイズでつまずいたのである。
これは単に入場料のプライシングに失敗した、という話ではない。レゴランドの「誰から、何で、どのように儲けるのか」というマネタイズにかかわる意思決定の甘さが引き起こした問題である。
さらにいえば、そのマネタイズは「どのような人に、どんな体験を、どんな形で提供できるか」という顧客価値の提案と密接に関連している。
こう考えると、価値創造のストーリーづくりがマネタイズのところで停滞しているといえよう。
その顧客価値は「自分事」になっているか?
顧客価値は、顧客の受け取るメリットの方がそれを得るコストよりも大きい時に生まれる。いわば、顧客のコストパフォーマンス、「コスパ」だ。
しかし、いくらコスパがよくても、そもそものコストが、顧客が支払おうと思える可処分所得よりも高ければ、まず「自分事」にならない。「他人事」として受け流される。
顧客は、そのプロダクトやサービスが自分事になって初めて、コスパを判断する。その意味では、家族連れでレゴランドに行くという行為や、そこに宿泊するなどのトータルコストが、多くの顧客にとって自分事にならなかったのである。
それを改めなければ、レゴランドの価格低下は止まらないだろう。