2018年12月号掲載
企業の「成長エンジン」を見つけ、火をつけ、持続させる Hacking Growth グロースハック完全読本
Original Title :Hacking Growth:How Today's Fastest-Growing Companies Drive Breakout Success
著者紹介
概要
近年、「グロースハック」という手法で成功する企業が増えている。これは部門横断的な実験を通じて急成長を促すもので、フェイスブックなど多くのシリコンバレーの企業が実践している。このグロースハックについて、生みの親らが基礎から説いた。IT企業に限らず、どんな企業でも活用できる、体系的に記された「完全読本」だ。
要約
「グロースハック」とは?
フェイスブック、ウーバー、リンクトイン…。これらシリコンバレーの企業が急成長できたのは、「画期的なビジネスアイデアを思い付いたからだ」などと言われるが、それは誤りだ。
成功までの道のりは、短くもなければ平坦でもなかった。どの企業も、製品開発とマーケティングの新たなアイデアを綿密かつ迅速に生成・検証し、成長につながる名案をユーザーの行動データから探したことで、成功にたどり着けたのだ。
それは、高速かつ部門横断的な実験を通じて急成長を促すアプローチで、私(ショーン・エリス)が後に「グロースハック」と名付けた手法だ。
アジャイル開発とリーン・スタートアップを応用
上記のプロセスを聞いて、ソフトウェアの「アジャイル開発」や「リーン・スタートアップ」の方法論に似ていると思う方もいるだろう。
この2つは、それぞれ製品開発と事業開発のために用いられ、グロースハックは顧客の獲得・維持、収益拡大のために用いられる。
アジャイル開発は、開発スピードの高速化、短い時間枠でのプログラミング、製品の定期的なテストの3つが柱になっている。
リーン・スタートアップは、迅速な開発と定期的なテストに加えて、「実用最小限の製品」を早く市場に出し、ユーザーから本音のフィードバックを得てビジネスを確立することを目指す。
これらの手法の継続的な改善サイクルと迅速な反復アプローチを、顧客獲得と収益拡大に応用したのがグロースハックだ。
グロースハックの3要素
グロースハックの実践方法は、企業によって細かな違いはあるものの、コア要素は次の3つだ。
- ・マーケティングと製品開発の分業体制を打ち破り、組織横断型チームを結成する。
- ・定性調査と定量のデータ解析を併用し、ユーザーの行動と嗜好に関する深い洞察を得る。
- ・アイデアを迅速に生成・検証し、その結果を厳しい基準で評価して対応する。
破壊の波を乗り切る
スタートアップから大手まで、あらゆる企業はグロースハックの手法を取り入れる必要がある。さもないと、すでに実践している競合によって破壊される恐れがある。IBMやウォルマートなどの老舗企業でさえ、グロースハックを生き残りに欠かせないツールだと考え始めているほどだ。
考えてみれば、Web上でのマーケティングと販売が当たり前になっている今、あらゆる企業がインターネットテクノロジー企業といえる。最新ツールを取り入れ、製品開発とマーケティングで実験し続けることは、デジタル製品の業界だけでなくあらゆるビジネスで必要性が増している。