2019年1月号掲載
「10%消費税」が日本経済を破壊する 今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を
著者紹介
概要
消費税率8%から10%へ ―― 。2019年10月に実施が予定される消費増税は、日本経済に“破壊的ダメージ”をもたらす、と著者は言う。なぜか? その証拠を、デフレ不況の引き金を引いた1997年の5%消費増税や、2014年の8%消費増税時のデータを引きつつ示す。そして、日本経済を真に再生させるための道筋を描く。
要約
消費税8%で庶民が貧困化した
2019年10月、消費税が10%になる予定である。
この消費増税は確実に、日本経済に破壊的ダメージをもたらす。国民はますます貧困化し、財政はさらに悪化していくこととなる ―― 。
一世帯あたり年間34万円も貧しくなった
2009~2012年、日本経済がどん底だった頃、株価の日経平均は1万円を割り込んでいた。ところが今は、2万円を上回る。各メディアはこの状況を、日本経済は素晴らしい景気状況にあるという「イメージ」でもって好意的に報道した。
だが、暮らしぶりが良くなったと感じる庶民は少ない。例えば、2017年の世論調査では、景気回復を「実感していない」という回答が82%に上った。庶民の景気実感は間違っているのか?
これを確認するには、「データ」を見ればよい。
2014年の8%への消費増税前後の「各世帯」の年間消費額を見ると、増税直前には、各世帯は年間369万円消費していた。しかし、増税直後から激減し、2017年には335万円に。つまり、消費増税によって年34万円(369万円→335万円)もの消費を削ることとなったのである。
経済上の良好な各指標とは裏腹に、消費増税以降、庶民の暮らしは確実に苦しくなったのだ。
日本全体の消費が冷え込んだままに
マクロ経済の状況も、消費増税以後、深刻になりつつある。
経済成長において、最も大きな役割を担うのが「消費」の拡大である。消費は経済成長における「メイン・エンジン」だ。
日本国内の消費総額(実質値)の推移を見ると、2012年の安倍内閣誕生から消費増税を行う2014年4月まで、消費は順調に増大していた。ところが、消費増税で消費は一気に縮小。増税前後で比較すれば、消費の下落幅は14兆円にのぼる。
あれから4年間、少しずつ消費は拡大しつつあるが、その回復ペースは年間約2.4兆円と極めて遅い。従って、いまだに消費増税前のピークの水準から5兆円も低い水準にしか至っていない。