2019年6月号掲載
ハーバード・ビジネス・レビュー 意思決定論文ベスト10 意思決定の教科書
Original Title :HBR's 10 MUST READS ON MAKING SMART DECISIONS
- 著者
- 出版社
- 発行日2019年3月27日
- 定価1,980円
- ページ数251ページ
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概要
個人から組織まで、ビジネスに「意思決定」は欠かせない。この重要な行為に関する、まさに“教科書”だ。『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌掲載の、意思決定に関する論文の中から、選りすぐりの10本をまとめた。脳科学や心理学などの面から、どうすれば判断ミスを犯さず最適な選択ができるか、第一線の研究者らが説く。
要約
意思決定をゆがめる心理的な落とし穴
元 ハーバード・ビジネス・スクール 教授
ジョン S. ハモンド 他
意思決定は、すべての経営者にとって最も重要な仕事だ。それは大変難しく、間違った意思決定のために事業が暗礁に乗り上げることもある。
では、なぜ間違った意思決定を下してしまうのか。間違いは、意思決定のプロセスではなく、意思決定者の心の中に潜んでいる。
アンカリングの罠
次の2つの問いに、あなたはどう答えるだろう。
「トルコの人口は3500万人以上でしょうか」
「トルコの人口はどれくらいだと思いますか」
普通の人なら、第1問の(筆者が恣意的に用いた)3500万という数値に引っ張られて、第2問に答えることになる。
筆者はこういった質問を多くの人々にしてきた。そのうち半数のケースで3500万という数値を第1問に用い、残りの半数のケースには1億という数値を用いた。すると、1問目に大きな数値を使うほど、2問目の答えが大きく増加するのだ。
これが「アンカリング」(固定化)として知られる精神現象だ。何か意思決定を下そうとする時、人は一番最初に得た情報にこだわってしまう。第一印象や当初の見積もり、データのせいで、次に続く思考や判断が鈍ってしまうのである。
現状維持バイアスの罠
我々は皆、自分の決断は合理的で、しかも客観的なものだと思いたがる。しかし事実はというと、必ず先入観に毒されており、何かを選択する際にもその先入観の影響を受けているものだ。