2019年8月号掲載
続・凡事徹底 成功の秘訣は二つ コツコツ
著者紹介
概要
イエローハットの創業者、鍵山秀三郎氏が著したベストセラー『凡事徹底』(1994年刊)。続編となる今回の書は、氏が行った3つの講演をまとめたものだ。日常の些細な、他人から見たらどうでもいいようなことでも、コツコツと積み上げる ―― 。凡事に徹する氏の生き方、道なき道を切り拓いた実践哲学が、様々な気づきを与えてくれる。
要約
日本人の美徳
日本は今、かつてないほど人心が荒れている。
まず、家族が崩壊している。家族の絆がなくなると、当然、社会の絆はなくなってしまう。人とのつながりは、経済的価値があるかどうかというだけで結ばれる。すれ違っても知らん顔をして通り過ぎる。そういうことが普通になった。
これでは絶対に日本の国はよくならない。たとえ見ず知らずの人であっても、エレベーターの中で一緒になったらちょっと会釈をする。そのくらいの気持ちは持ってもらいたいと思う。
エミール・デュルケムの予言
この国がこういうふうになることを、実は100年も前に予言した人がいる。フランス人のエミール・デュルケムという社会学者である。
デュルケムは、こう言っている。
「近代社会は、個人に勢力と富の突然の増大をもたらした。そのため、個人の生活の諸条件は変わってしまい、それまで欲求を規制してきた尺度は変化し、混乱してしまった」
日本人は、自分を律して、自分で自分を規制していくという素晴らしい美徳を持っていた。しかし、それが失われてしまった。デュルケムは、将来こうなることを予言していたのである。
彼は続ける。
「いったん弛緩してしまった社会的な力が、もう一度均衡をとりもどさない限り、(中略)一時すべての規則が欠如するという状態が生まれる。そうなると、人は、もはや、何が可能であって、何が可能でないか、何が正しくて、何が正しくないか。何が正統な要求や希望で、何が過大な要求や希望であるかをわきまえない。だから、いきおい、人は何に対しても、見境なく欲望を向けるようになる」
この文章は、今の日本の姿をよく表している。
日本人の4つの美徳
日本人の美徳はたくさんある。古くは『魏志倭人伝』に、「日本人は嘘をつかない。泥棒がほとんどいない、非常に立派な民族だ」ということが書かれている。