2019年10月号掲載
直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN
著者紹介
概要
「人類を火星に移住可能にする」(イーロン・マスク) ―― 。今、世の中を動かすイノベーターの出発点は、「妄想」や「直感」だ。戦略デザイナーの著者は、途方もないビジョンを基に、直感を論理につなぎ、妄想を戦略に落とし込む思考法を「ビジョン思考」と命名。「妄想→知覚→組替→表現」の4つから成る、そのメソッドを説く。
要約
「ビジョン思考」とは何か?
圧倒的な結果を出し続けている会社やチーム。その陰には、「これがやりたい!」という強い想いをもった人たちがいる。
彼らを動かしているのは、「論理的に導き出された戦略」や「データ分析に基づいたマーケティング」などではない。その原動力は、根拠のない「直感」、得体の知れない「妄想」。いわゆる「ビジョン」の素になっているものなのだ。
あえて論理・戦略からはじめない
「それはただの個人的な妄想だ。まず論拠やエビデンスを示せ」「論理に裏打ちされた戦略があってこそ、成功にたどりつける」…。これが、かつてのビジネスの常識だった。
しかし、今や、こうした戦略は機能不全を起こしつつある。データやロジックに基づいてマーケットを絞り込み、そこに資本を集中投下するという旧来の考え方では、なかなかうまくいかない。
一方で、直感や妄想を基に、マーケットに強烈なインパクトを与えている人・企業がある。彼らは、途方もない妄想をまず示し、それを駆動力に、ヒト・モノ・カネを呼び込む。例えば ――
「2035年までに人類を火星に移住可能にする」(イーロン・マスク/スペースX)
「質の高い教育を、無償で世界に提供する」(サルマン・カーン/カーンアカデミー創業者)
ただの直感・妄想で終わらない
彼らを突き動かすのは、直感である。自分が描く未来に対する、狂信的とも言える妄想だ。
なぜ、彼らは論理を離れたところからスタートしながら、最終的に、現実を動かせるのか?
そのカギは「直感と論理をつなぐ思考法」だ。自分の妄想を解き放った後には、それを具体的な「かたち」へと落とし込み、周囲の人を納得させていくステップが不可欠だ。
ビジョナリーな人たちは、途方もないビジョンを駆動力にしながらも、同時に、直感を「論理」につなぎ、妄想を「戦略」に落とし込む。こうした思考のモードを、「ビジョン思考」と呼ぶ。