2019年11月号掲載
データ資本主義 21世紀ゴールドラッシュの勝者は誰か
著者紹介
概要
ビッグデータというキーワードが注目されて久しい。これを武器に、GAFAなど巨大プラットフォーム企業が市場の支配を強め、経済構造を変えつつある。著者は、この膨大なデータを武器にした経済活動を「データ資本主義」と命名。現状と問題点を明らかにし、将来を見通す。この先は、GAFAといえども決して安泰ではない!?
要約
ビッグデータによるパタン認識
「ビッグデータ」。この新しいタイプのデータは、経済活動に新しい可能性を開く。AI(人工知能)はビッグデータによって賢くなる。そして、ビッグデータを活用することで、これまではできなかった様々な新しい活動が可能となる。
半面で、ビッグデータは様々な新しい問題を提起する。プラットフォーム企業と呼ばれる企業が市場を支配する可能性がある。それだけでなく、監視社会がもたらされる危険もある ―― 。
コンピュータが苦手な「パタン認識」が可能に
ビッグデータは、AIの「パタン認識」のための学習データとして用いることができる。
パタン認識とは、「コンピュータが図形や自然言語を認識し、理解すること」だ。例えば、写真に写っているのがリンゴかミカンかを判別する。あるいは、人間が話している自然言語を理解したり、手書き文字を認識したりする。
このような判別は、これまでコンピュータにはできなかった。ところが、AIの能力がこの数年で急速に向上し、パタン認識技術が実用的なものになってきた。AIのパタン認識は、自動車の自動運転など、実際の生活と社会の構造に大きな影響を与える可能性を持っている。
「ニューラルネットワーク」による情報処理
最近、パタン認識でブレイクスルーがあったのは、「ニューラルネットワーク」(神経系ネットワーク)によるディープラーニングが用いられるようになったからだ。
これは、人間の神経細胞(ニューロン)と似た働きをする仕組み(ニューラルネットワーク)をコンピュータの中に作り、大量のデータを用いて情報の処理方法を習熟させようとする方法だ。
人間の脳にあるニューロンは、他のニューロンから信号を受け取り、他のニューロンに信号を送っている。脳は、こうした信号の流れによって、様々な情報処理を行っている。
ニューラルネットワークによるディープラーニングは、コンピュータの中でこのような仕組みを再現しようとするのである。ニューラルネットワークは多数の層から構成され、これが人間の脳にある神経細胞の役割をする。
AIの思考過程を人間が理解できない
一方、ニューラルネットワークの問題点は、ディープラーニングに基づくネットワークがなぜ正解なのかを人が理解できないことだ。AIが正解を導く過程が、ブラックボックス化しているのだ。
過程はわからないが、答えは正しい。成果が華々しいので、その方法を認めざるを得ないが、これは科学的方法論の根幹に関わる問題である。