2019年11月号掲載

中国名言集 一日一言

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著者紹介

概要

「千里の行は足下に始まる」「君子は和して同ぜず」「先ず隗従り始めよ」…。中国文学者が、中国の史書、詩文などから時代を超えて生き続ける名言を厳選、明晰な解説を添えて紹介する。誰もが知る極め付きの名言から、隠れた名言、人生の機微を映し出す俗諺まで。様々なニュアンスに富む多種多様の言葉を味わえる1冊である。

要約

悠久の歴史の中にきらめく名言

 長い歴史をもつ中国には、今なお人の心をうつ名言が星の数ほどある。時代を超えて生き生きとした生命力を保つこれらの言葉は、しみじみ味わうと、発言者の深い叡智を感受して、なるほどと元気になったり、勇気が湧いてきたりする。

千里の行は足下に始まる 『老子』

 道家思想の祖、老子の言葉。孔子を祖とする儒家思想は、教養を高め社会的に有益な存在となることを重視する。これに対して、道家思想はあるがままに、のびやかに生きよと説く。

 この言葉も、すべては小さな積み重ねから始まるが、だからといって無理する必要はなく、自然体で対処するのがよい、という脈絡で述べられている。力まず、ゆったりとマイペースで生きることの大切さを説く言葉である。

君子の交わりは淡きこと水の如し 『荘子』

 道家思想の祖の1人、荘子の言葉。「小人の交わりは甘きこと醴の如し」と対句をなす。淡々と水のような君子のつきあい方と、ベタベタと甘酒のような小人物のそれが対比されている。

 利益で結びつく小人物は得になる場合は密着するが、いざ相手が逆境になると離れてゆく。一方、君子は淡々としながら、相手が逆境になるほど思いやるという文脈で述べられている。なかなか痛烈な皮肉のこめられた発言である。

 三国志世界の英雄、劉備は「三顧の礼」によって諸葛孔明を軍師に迎え、厚遇した。弟分の関羽と張飛が嫉妬し文句を言うと、劉備は「孤の孔明有るは猶お魚の水有るがごとし」と答えた。

 親密度の高い交際を、「水魚の交わり」というのはこれに由来する。

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