2020年3月号掲載
ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION
著者紹介
概要
今のやり方では、未来はない。新たなモデルが必要では…。1人の人間が抱く、こうしたモヤモヤした気持ちが“妄想”へ発展することからイノベーションは始まる! 戦略デザイナーが、個人の想いを起点に、創造と革新を行うための智慧をまとめた。「場と間をつくり出せ」「独創を最大化する共創を仕込め」等々、変革のヒントが満載だ。
要約
イノベーション活動は生きているか
様々な企業が、イノベーション活動に取り組んでいる。だが、その多くはうまくいっていない。
うまくいかないイノベーション活動のほとんどは、「アイデアは多く出るが、その後つながらない」「社内の前例や慣習とぶつかった時に足止めを食らう」といったパターンで滞ってしまう。
そのような結果になってしまう理由として、次のような課題が挙げられる。
人の不在:主人公がいない
「イノベーションが必要だから」というようなトップダウンの号令で始まり、初対面の人たちが互いの部署の利害を調整しつつ進めるイノベーション活動からは、魂のこもったプロダクトやビジネスは生まれにくい。メンバーが、様々な部署の利害調整をしながら妥協してつくったものは総花的な企画書となり、一向に形にならない。
イノベーションのテーマを“自分事化”する主人公がいないと、プロジェクトは前に進まない。
場の不在:育てていく場や仕組みがない
新規の取り組みは、多様な意見から出てきたアイデアをもとに、生き残っていく強いアイデアを育てていく営みである。
失敗できない雰囲気の中では、新しいものは考えにくい。逆に、楽しく、面白い人が自発的に集まって遊ぶことができる場をつくれば、放っていても面白いものは“生まれてしまう”。
イノベーション活動は、その実現までに多くの壁を乗り越える必要があるが、それを促進させる“場”や“仕組み”があることで、新しいタネは生き残りやすくなる。
意志の不在:アイデアがまとまらない
新しい取り組みを具体化していく初期段階では、「アイデアがまとまらない」という現象が起こる。
アイデアをまとめるには、「なぜ、やりたいのか?」「どんな問題を解決したいのか?」といった強い想いが必要だ。そういった、プロジェクトをやる意義やビジョンを常に話し合っているチームは、アイデアがまとまりやすい。
つくり方の不在:創造の方法論が使えていない
質のよいものをつくるには、個人の“独創”によるアイデアのタネを、“共創”を通じてブラッシュアップしていく必要がある。