2020年4月号掲載

『論語』がわかれば日本がわかる

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著者紹介

概要

上下関係はあるのが当たり前、ホンネとタテマエの使い分けは必要…。こうした「日本人らしい」とされる価値観は、どこから来たのだろう。本書いわく、江戸時代以降、『論語』や儒教を基に形成された。日本人の心に刷り込まれ、今もなお、私たちを無意識に縛るもの。その正体を、孔子らの教えを手掛かりに解き明かす。

要約

『論語』と孔子の教えについて

 われわれ日本人は、ある特徴的な「日本人らしい」行動様式を往々にしてとってしまう。では、この「日本人らしさ」は、どこで形作られるのか。

 心理人類学者の箕浦康子先生は、14、15歳までにどのような文化や環境に置かれていたかが、その人の文化的背景、つまり「〇〇人らしさ」を形作る決定的な要因だという。

 その文化の刷り込みがなされる代表的な場が、幼児・小学校教育。さらに社会人になり、伝統的な企業や官公庁に所属すると、その組織風土が、子供の頃に刷り込まれた価値観を強化する。

 こうした「教育」と「組織」の文化の中に、江戸時代より現代までずっと根を下ろし続けているのが、『論語』や儒教の教えである。

 『論語』の主人公ともいうべき孔子は春秋時代末期、周王朝の中頃に活躍した。周王朝は春秋時代が始まった頃には国の数が二百数十あったが、戦乱や下剋上で次第に淘汰され、後に秦が中国を統一する。孔子の思想は、この時代状況を反映した面がある。つまり、「平和で安定した秩序をうち立てるには、どうしたらよいのか」というのが、彼の抱いた問題意識だった。

 孔子は、うまくいっていた周王朝初期の政治体制を手本とし、その文化・社会制度を設計した政治家、周公旦を尊敬した。彼のつくった文化・社会制度の精神に立ち返れば、再び平和で安定した秩序を取り戻せる、というのが孔子の信念だった。

 こうした観点からは、彼の思想のもう1つの前提である、「過去の良きものにこそ手本があるとする保守主義」という側面が出てくる。

 こうした価値観は、そのまま江戸時代以降の日本人やその文化に、濃厚に刻印されていく。

 

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